第9話 追跡
夕凪は白いブラウスとジーパンに着替えて家を出た。一応ベルトに御守りを下げた。
神社の階段がいつもより億劫だった。
階段の上で古川が待っていた。
彼も長袖Tシャツとジーパンだった。
夕凪は一気に走り上ると勢いよく彼の首に抱きついた。顔は俯いている。
古川は少し驚いていたが、しっかり抱き返した。
「そうか、上手くやったようだね、よかった」
「ううん、慌て過ぎてギリギリだった。折角力貰ってたのにすぐ思い出さなかった。危なかった」泣きそうな声でボソボソ言った。
「助かったんだから、もう自分を責めないの!」
古川は夕凪の頭を撫でて嗜めた。
「僕だって救えない時、沢山あったんだ。夕凪は初めてなのに偉い」
「そうなの?」
「僕は今の世界なら最強に強いけど、他の時は、ね。死にかけた時もあった。取り敢えず、中入ろ?」
夕凪はようやく古川から離れた。若干俯き加減だが、古川が顔を覗き込むとふいっと逸らした。
顔が赤くなっていた。いろんな気持ちがあふれてきて夕凪から抱きついてしまった。
珍しく古川からのリアクションが無かったので逆に恥ずかしさが引かない。
二人で奥さん特製のチャーハンを食べた。
その後お茶を飲みながら今日あった事を話した。
「地蔵は頑張ったけど壁濃くしたら息できないって気が付かなかったんだろな。でも、壁が無かったら一瞬で線路に放り込まれていた。感謝しな!地蔵はもう駄目だろう、存在が感知できない」
古川は残念そうに説明した。
「そんな…学校にいる奴退治しても?」
「関係ないな。供養するのって、神社?寺?しばらく置いとくか」
夕凪はお腹一杯になると、途端に眠くなってきた。
「古川さん、何かしてない?」
「いいや、どうして」
「夕べあんまり寝れなかったからかな、すごく眠い」
「僕、本当に何もしてないけど?気が緩んだのかも。此処なら怪異類一切入れないし、絶対安全安心だからね。夜遅くなるかもしれないから寝ておいたほうがいいよ。布団出そうか?」
「ここでいい、なんか掛ける物欲しい」
古川が隣の部屋に行って枕と毛布を持ってきた。
夕凪は素直に横になった。
「古川さん、催眠かけて」
「え?催促されるとは。でも、もう寝そうだよ」
「寝てから力入れといて。起きてると恥ずかしいから」
「なるほどね」
古川が顔を近付けた。薄茶色の目が陰る。
『あれ?目の色変わってない、まだ寝てないって』
と思ったら口付けられた。
文句言おうと少し口を開けたら、いつものように古川の力が入ってくる。
面倒くさくなって、そのまま受け入れながら
『後で文句言わないと』と思ったが、意識が遠のいてそのまま寝入ってしまった。
古川は力を入れるのと催眠の順番をわざと逆にしたが、本人は呑気に受け入れて寝てしまった。
「余程眠かったんだろうな。起きたら怒られるかな?」
ふふっと笑って、食器の後片付けと、今夜の準備を始めた。
「夕凪、起きて。そろそろ行くよ」
頬を撫でる手の感触に、夕凪は目を覚ました。
古川が側に正座して手を伸ばしている。
「なんか、深ーく寝たって感じ。催眠術最高」
うーんと思い切り伸びをして欠伸した。
古川がその両肘を押さえた。
「ふぇ?」
「油断したね?」
「ええ?」
古川の顔が近付いたので横を向いた。
そのまま夕凪の耳穴に舌先を突っ込んで舐め、耳たぶをぺろっとねぶって軽く吸った。
「じゃあ、行こうか?」そのまま耳に囁いた。
パッと両手を離すと立ち上がった。
「!?!?」夕凪は顔が真っ赤になって起き上がり、プルプルしながら
「古川さん、最低ー!」と大声で言った。
「そのくらい元気なら大丈夫だね」と涼しい顔をしている。
古川はデイパックを背負い、外へ出た。
そして、隙を見て夕凪を抱え、階段五段飛ばしをして降りた。
不意をつかれた夕凪がしがみついてると、下に着いた途端に額ににキスされた。
夕凪がじたばた動いて古川から降りた。
「もう、いつもいつも隙有らばエッチな事ばっかりする!」
「だって、可愛いし。隙があり過ぎなんだ」
「…」
二人は中学校へ向けて歩き出した。
「最近仲良い加賀谷とはキスしないの?」
口の両端は上がってるが、非難の目を向けている。
「はあ?なんで加賀谷?する訳ないでしょ!中一で同じクラスで席が前後だから話し出しただけ!」
「加賀谷はそう思ってないみたいだけど?小学校から狙ってたみたい。マセガキだな」
口調が刺々しい。
「どーでもいいです。私は何とも思ってません。それとも、加賀谷とキスすれば古川さんもうしない?」
「何言ってるの、加賀谷となんて絶対許さない。あいつとは夕凪と力の波長が全く合わない。よく怪異が取れたな」
古川はニコニコしながらきっぱり否定した。
「古川さん?何言ってるの?」
古川は夕凪の両肩を掴んで顔を覗き込んだ。
「夕凪は僕のだ。力が僕とほぼピッタリ合うんだ。誰にも、怪異にも絶対渡さない」
「何故、人と怪異が同列なんですか?いつの間にか私は古川さんのものになってるし」
「その通り。異存は許さない」にっこり笑っている。
夕凪は古川の独断且つ勝手な言い方にムッとした。
「力が合う合わないは関係無いと思うんですけど?」
「大有りだよ。じゃなきゃ力の受け渡しとかできないよ。僕と夕凪だからできるんだ」
夕凪は驚いた。
「誰とでもできるんじゃ無いの?」
「少しならできる人もいるが稀だ。今まで、散々世界を移ったけど力を大量に送り込めたのは一人だけ。それが夕凪だよ。君は僕にとって貴重な存在なのをわかってくれた?」
「貴重な存在…」
夕凪はごくりと唾を飲み込んだ。自分がそんな特別な人間だとは全く思っていなかった。
「つまり、夕凪は世界で一番僕に近い人だ」
「古川さん、それって、なにか良い事あるんですか?」
古川はふふっと少し笑って言った。
「僕みたいに怪異や霊なんかを、引き寄せ易い体質って事だよ」
「!!それ一番欲しくなかった!!」
「来る奴全部殺せば問題無いよ」
「殺すとか簡単に言うな〜!」
ぶつぶつ言う夕凪は、古川に手を引っ張られたまま中学校に到着した。
校門には誰か佇んでいた。
「坂木先生!」
古川と彼はお互い手を振った。
「お待たせしました」
夕凪は少し緊張して頭を下げた。
「一年一組の如月夕凪です」
「これからよろしく。二年二組の担任の坂木だ。僕の両親とは面識あるんだよな」
「はい、お世話になってます」夕凪は頷いた。
古川の方へ向いて
「助手だから若いとは思ってたけど、まさかうちの新入生だとは思わなかったよ。大丈夫なのかい?」
と心配している。
意地悪古川と違っていい先生だな、と思った。奥さんと顔が似て優しげな感じが滲み出ている。
「問題無い。何なら、あなたよりかなり強い」
古川はスパンと何の気遣いもなく断定した。
「え、坂木先生も怪異とか祓えるの?」
一緒に来てもらえたら心強いと思ったが。
坂木は困った顔をして
「残念ながら、霊とか何となく感じる位で、大学で勉強して普通のお祓いと祝詞言えるだけだ。神主もあまり継ぐ気ないし」
「ちぇ、いいな。その位で良かったのに」と夕凪は呟いた。
坂木は古川に二つの鍵を渡すと言った。
「3階の端に使われてない準備室があって、いつの間にか空いてて中の物がぐちゃぐちゃにされてたんだ。
そこを整理に行った先生方が皆休んでる。僕が行ってみたけど、わからないし、何ともなかったんだ」
「そこが怪しい?」
「他に変わった事をした覚えが無いんだ。新年度始まって色々バタバタして忙しかったから、その時に何かしたのかもしれないが」
「一応心に留めとくよ。まあ、動き回ってるけど」
「「えっ」」夕凪と坂木だ。
「あ、でも、その部屋から伸びてるから、やっぱり関係ある。断ち切ってみようかな」
「それが離れないようになってる可能性もあるよね?」
夕凪は一応聞いてみた。
「そうだね、どっちにしてもその部屋行ってみるか!」
一緒に行くと言う坂木を残して、二人は校舎の玄関前に立った。
校舎はコの字型をしていて向こう側に折れている。問題の部屋は3階の左端だ。暗がりで目は慣れてきたが、中は非常灯しかついていない。
「私は今回も立ってるだけでいいのでしょうか?」
古川はにっこりして
「今回は走るかも」と言った。
「走る?追いかけられる?」
「追いつ追われつ、かな、それ用の格好」
古川はジーパンを履いている太ももをパンと叩いた。
「怖い上に走るとか、どこの安物ホラー映画ですか。作戦とかあるんですか?」
「見つけて殺す」
「わかりました。無いんですね」
「場所はわかったから、簡単だよ」
「私は何を?黒沼発射台ですか?」
ブフッと古川が吹き出し、大声で笑った。
「上手い事言うね!今回黒沼じゃ小さすぎて逆に呑まれるかも。家でお留守番だよ」
玄関のドアを開けながらまだ笑っていた。
「今、サラッと怖いこと言いましたね?黒沼が太刀打ちできないと」
「夕凪食べたら大きくなるんだけど」うっそり笑う。
「絶対嫌!」
中に入ってドアを閉めた。
「見える?」
「うう、おたまじゃくしがうぞうぞといっぱい」憂鬱な声で言った。
「ボスはカエルに違いないです」
「だといいね、一口で食べてくれる」
想像してしまい、鳥肌が立った。
「意地悪!」
夕凪達の前10メートルほどの距離に、黒いサッカーボール大の頭?に細長い尻尾がついている怪異が浮いている。
周りが青白く光っていて、尻尾の先は見えない。ゆらゆら揺れているがこちらに気付いた様子がない。
「これ、明日くっつける分だな。これを辿れば本体に行ける」
古川は夕凪の手を握ったまま、スタスタ歩いて近付いていく。
「これがみんなの背中に取り憑いているモノの正体ですか?」
「そうだよ、あ、お先にどうぞ」
古川は手を離して夕凪の背中を押した。
「え?何するんですか!」前によろよろと動いた。
「君は囮だ」古川は後ろに飛んだ。
ふわふわ浮かんでいるだけだったオタマジャクシ達は一斉に夕凪の背中目掛けてやってきた。
「いやー!」そのまま動けずに固まってしまった。
触れそうになった瞬間、後ろから古川の力が飛んできて夕凪の背中が光り、反射して広がると間にあったオタマジャクシの頭が吹き飛んで消えていく。
「夕凪の結界の効果素晴らしいな、効率いい!」
その場にいた2、30のオタマジャクシはほぼ消えてしまった。
ただ消えたのは頭だけで尻尾の部分は残って後退していき、そばの中央にある階段へと消えた。
「こ、が、わ、さーん?」振り向いた夕凪の顔は恐怖と怒りで引き攣っていた。
「怖かった?」
いつの間にかニヤニヤ笑いに変わっている。
「一個一個消してくのが面倒でさ、さっき思いついたんだ。大成功だね。次もよろしく」
「嫌です!私が呼ばれた訳って、これ?」声が裏返った。
「そんな事無いよ。ただ、僕だと強過ぎて、思い切り殺気が出てるみたいで寄って来ないんだよ。さっき一つにまとめようとしてもそれぞれ独立しててくっつかないし、面倒だなーと」
「そこで、私を怖がらせる計画を思いついたんですね?」
「うん、そうそう。それに早くやっつけられるし」
「身も蓋もない」
夕凪は古川をキッと睨みつけたが、彼の胡散臭い微笑みは変わらない。
「そんなの放っておいて本体殺ってしまいましょうよ」
「背中に憑かれたら身動き取れなくなるよ?」
「…次はどこいくんですか?」
「あれ、いいの?囮で?」
「怒りが恐怖を打ち負かしました。もう、どうでもいいです。あなたの唯一の存在にしては扱いがひどい!」
「唯一僕の攻撃を受けつけない存在でもあるんだ」
「だからってこれはナイわー。終わったら二度とお手伝いしませんから!」
夕凪は走り出した。
「そんな事言わないで、あ、そこの階段の前で止まって!」
古川が追いつくと反対側のオタマジャクシが夕凪の背中を狙っている。
「古川さん!」
「逝ね!」古川は手を伸ばす。オタマジャクシの尻尾を、空中に出現させた金色の手で全部掴んで地面に叩きつけた。
次々に風船が破裂するように消えていく。
「あ、これでも殺せた」のんびり言った。
「囮要りませんよね?」プーっと頬を膨らませた。
「こっちに変えよう。走るの疲れるね」
「もー私の苦労は!あ、でも、尻尾が階段上がっていく!」
「追いかけよう!」
古川は神社の階段ほどではないが登るのが早い。
「待って〜」
夕凪も早くはなったが彼には追いつかない。2階に辿り着いたが、尻尾は更に上へと登って行った。
先に着いた古川は2階のオタマジャクシもさっきと同じように粉砕していく。今度は両手を使っているので早い。
する事が無くぼーっと見ながら立っていた夕凪は試しに、転がってきたオタマジャクシの頭へ、手のひらを向けて力を放出してみたが、弾くだけで消せなかった。
「こら、無駄遣いしない!そんな当て方じゃ上滑りしている」
古川はそれを片足で押し潰した。
「難しいなあ」夕凪がちょっと落ち込んでいると、2階のオタマジャクシを全て消した古川は、
「あー疲れた、休憩」
と言って階段に座った。
「休憩?こんなとこで⁈」
古川は背負っていたデイパックを下ろすと中から保冷水筒と袋を取り出した。
「一個あげる」
差し出された袋の中に一口饅頭5、6個とおはぎが二つ入っていた。
「奥さんからおはぎ貰ったんだ」
周りを警戒しながら恐る恐る一口饅頭を貰った。
「荷物ってこれだけ?」
古川は既におはぎを半分食べながら
「長いしめ縄持ってきた。大きいから括れるかどうかわからないけど」
「その上からガムテープ巻くとか言わないで下さいね」
「面白いなあ、夕凪ちゃん、余裕だね」
「気を紛らわしているんです!怖いから!」
間接キスだーと言われながら保冷水筒のお茶も少し貰った。
今更何を言ってるんだろう、この人。
もっとすごいの…夕凪は考えるのを止めた。
古川は結局おはぎはニ個とも、一口饅頭を更に三つ食べて、最後にお茶をグビグビ飲んで漸く立ち上がった。
3階に着くとオタマジャクシは一匹だけいて、古川達の姿を見るとすーっと去っていく。
「本体へ案内してくれるようだ。本体さっきまでこの辺を動いてたのに」
「その下でよく休憩できましたね⁈」
「おやつタイムは大事だよ。これ持って」
代わりに出したしめ縄を持たせた。
「5メートルあるんだけど、足りるかな?」
「どんだけ怪異大きいんですか!」
夕凪は半泣きだった。
「わからないの?左の角を曲がったらいるけど」
「どっちにしても絶対先に行きませんから!!」
「両端持って廊下の両端を走ってぐるっと巻き付ける作戦で」
「えー、それ作戦て言えます?それで終了じゃないですよね」
「後は相手の出方次第」
「ほぼ行き当たりばったり」
「夕凪は準備室?の本体壊してね」いつの間にかトンカチを出している。
全身から血の気が引いた。
「それは怪異の向こうにあるんじゃないですか?」
「うん、すり抜けて?結界で守ってるから何ともないよ。これ鍵」
二つを反射的に受け取ってしまった。
「嫌だよう」
「ほら、行くよ!」古川の先導で遂に角を曲がった。
「うわっ」「嫌ー無理無理無理無理」
怪異は横が廊下の幅で、高さは天井より大きくて頭の部分が折り返してある。
身体中から出ていた尻尾が取り込まれる。
「一応当初の作戦で」
古川が走り出したのでやむを得ずしめ縄の端を持って廊下の端を行く。
「そのまま突っ込め!」
やけになって前は怪異だが飛び込んだ。
夕凪と古川としめ縄が薄く金色に光る。しめ縄は怪異を丸く取り囲んでいき、二人は怪異の中を突き抜けていく。
「夕凪!貸して!」
ぐるっと回ってきた古川が叫んだ。
しめ縄の端を渡すと彼はもう一方を上へ投げた。
「縛れ」腕を上げて、拳を握ると、しめ縄の端から金色の紐が出てきて怪異をぐるぐる縛っていく。
一方突き抜けた夕凪は、悪寒で震えて鍵穴に鍵が入らず、両手で持ってようやく鍵を回して開けた。
中は紙の箱が積まれて足の踏み場もない。
怪異から出ている紐はその奥だ。
夕凪は手前の箱を掻き出して進んだ。
「まだかい?」古川がのんびりと尋ねた。
「ちょっと待って今、見つけた!」
50センチ四方の箱だった。
蓋を開けて覗くと
「ひゃー!古川さん!頭蓋骨が入ってる!これ砕くの?無理だよ〜」
「うーん、それ、ちょっと抵抗あるな、持ってきて!」
「えー!」夕凪は渋々手を突っ込んでそれを掴んだ。
「いや、箱ごとで良いんだけど。夕凪?しまった」
その瞬間目の前に風景が広がった。
今と違う制服を着た女の子が、男に襲われている。
思わず「こらー!離せー」
とトンカチを持った手を男の後頭部に振り下ろした。
しかし、トンカチはすり抜けてしまった。
両肩を掴もうとしたが、やはりすり抜けてる。
男は首を締め始めた。
「止めてったら!」
叫んだら、男は後ろを振り返った。
「ひいっ」
男の目は血走っており、二人は下半身がむき出しだ。
しかし、夕凪は見えていないようだ。
男は自分のズボンを上げると、女の子を引き摺っていく。
場面が変わって、校舎の裏のゴミ焼きの中に詰め込まれて火をつけられる情景に変わった。
「最低、最低野郎!」
夕凪は泣きながら叫んだ。
残った残骸を箱に入れてどこかに去って行った。
狭い場所で女の子は丸まっている。
ガタガタと音がして箱が崩れる。
女の子は目を覚ました。赤く光る目、憎悪で真っ黒に染まった身体で叫ぶ。
『どこに行ったあの男、殺してやる。絶対探し出す』
『私が絶対に見つけて殺してやる!』
夕凪は叫んだ。
「夕凪、気持ちはわかるけど、苦しいので止めて」
呑気な声が聞こえた。
夕凪が我に返ると、古川さんの首をギュウっと締めていた。
「やだ、なんで?」
慌てて外すと古川は咳き込んだ。
「さすがに直に触ると取り憑かれたか」
「取り憑かれた⁈恐っ!」
「大丈夫、祓ったから」
古川は箱ごと頭蓋骨を持ち上げた。下には他の部位の骨が入っていた。
「また、入れといた方がいいか」と重なった箱の上に置いた。
「あれは?」
「しめ縄足りなくて、僕の力を繋げて、延長して縛り上げてたら消えた」
「延長ってコードか」
「ここから出られなくて、みんなにマーキングして犯人を探させてたようだ」
「何で観月だけあんな目にあったの?」
「守られてるのが腹が立ったんだろ」
「それって逆恨みだよ!」
「彼女は誰にも守ってもらえなかったからね」
それを聞くと夕凪は悲しみで心が痛んだ。
古川は部屋に鍵をかけると
「出よう」と夕凪を促したので、後ろ髪を引かれる思いだったが手を繋いで歩き出した。
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