チェルノブイリのひまわり畑

お題:女同士の終身刑 制限時間:30分


チェルノブイリのひまわり畑

「あー」

「どうしたの?」

二人で見晴らしの良い高台から町を見下ろす。

「あー、あ」

彼女は正面を指差した。

「あそこに何かあるの?」

「あー!」

お互い、もう二十代も後半だろう。多分そうだ。世界がこんなになってから、もう何年も経つ。

「じゃあ、行ってみようか」

「あー!」

テロリストが核ミサイルを手に入れてから、世界は激変。ヨーロッパのどこかで核ミサイルがフランスに打ち込まれて以来、どの国も「テロリストに対する制裁」「テロリストを支援した制裁」「制裁に加担した国だから」と見境なく核を使いまくった。ぎりぎりまで温まったフライパンの上で、ポップコーンがはじけるように、世界はきのこ雲だらけになった。

この地球上に、まともな国はないだろう。国境も、人種も、先進国後進国もなくなった。

地球は、人類誕生以後最も平和になった。あるのは戦争ではなく、縄張り争いだけ。


二人で、目的地に向かう。場所は地図を指差してくれた。

瓦礫だらけの道を進む。アスファルトも、ひび割れだらけで、歩きにくい。

「あー、あー、あー」

能天気に歌う彼女。小型の拡声マイクが壊れてから、修理も出来ず、外では会話もほとんど出来ない。

「何があるの?」

「あぁ!」

何も分からない。

「まあいいか」

細かいことを気にしても始まらない。

そんなこんなで、到着したのはホームセンターの跡地。建物はボロボロで、埃まみれ。私たちも何度か訪れていたが、保存食は全て無く、道具類も錆びだらけだった。

「あー」

彼女の言うままについていく。

荒らされたバックヤード。木材のかけらとか、煉瓦、袋に入った砂利。そんな今となってはどこでも手に入るものが残っていた。

「ああ!」

何かを見つけたようだ。

「なにこれ、種? 花だよね」

彼女は首を振る。

「あー!」

「ひまわりの種?」

「あー!」

袋を指し、口に入れるジェスチャーをする。

「あ、食べられるのか」

盲点だった。作物の種や、自然に発芽したものは持ちさらられたり、枯れていたが、花の種はまだまだ残っていた。

「育つかなぁ」

「ああ!」

彼女の直感を信じ、持ち帰ることにした。植物の種はとても大きな収穫だ。無限に増える食物は、価値も無限大だ。

持てるだけの種をリュックにつめ、持ち帰った。

それからは、拠点の雑居ビルで、屋上に土を持って上がり、耕した。一日仕事で、女二人では大変だ。ミイラ化した誰かの死体等も混ぜてみた。問題は水だ。

「ひまわり、育つといいね」

寝床で話しかける。

「そう……だね」

長い金属パイプに喉を当てて、彼女は言った。

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