第七章第七話

木の葉が、赤や黄色に染まっていく、秋。

俺たちの所では家の近くでぐらいしか見れない。

何故ならば、都会だから。

あと、俺は山付近で暮らしているから。

半分都会、半分田舎。

そして、ちょと北に近い。

ぐらいのところ。


だが、俺は今、完全なる田舎にいた。

「…。」

木、木、木、家、田、田、木、木、田、家

「…。」

「頼様。お祖母様がお呼びになっております。」

「わかった。すぐ行く。」

メイドってこんな田舎にもいるのか。

幼い時はここでおばぁちゃんとおじいちゃん

と暮らしていた。

あと、メイド。

多分この家が田舎の中で一番でかい家である。

「秋休みの間はここにいろ、か。」

そう手紙に書かれており、

俺はそれに逆らう事は出来ない。

逆らったら武力行使で来る。

「あー、怖い怖い。」

これは決定である。世界の一番怖い映像の何倍も怖い。

これに慣れたらそこら辺の怖いやつはお子ちゃま程度だ。

「話って?」

「最近、会っておらんだっだろう。」

「あぁ。」

「お小遣いでも渡そうかと思ってねぇ。」

そしたら出てきたのはアタッシュケース。

嫌な予感がしながらも、それを開ける。

「…。」

その中には10万円でまとめられた札束が詰めてあった。

俺はその中の1万円を取り、

「俺はこれで良いよ。」

と言った。

「そうか。」

とおばぁちゃんも分かってくれたらしい。

「101万円でしたから、丁度良かったですね。」

このメイド、分かって入れてたな。

「ごめん。ちょっと散歩してくる。」

俺はその場から逃げるように(本当にそうだけど。)出ていった。

俺が出ていって、誰かが話しかけてきた。

「ミィ君?」

「え?」

「ミィ君じゃん。」

「お前もしかして、フウ。」



フウと出会ったのは俺が小3の時。

新しいクラスになって、クラスに馴染めてない時。

フウが話しかけてきたのだ。

「名前、なんて言うの?」

「神道 頼。神様の神に、道の道。頼むの頼。 」

「僕は、冬野 雪。冬の冬に、野原の野。冬の雪の雪。」

「で、何?」

「友達になろうよ。」

「…。良いけど。」

「やったー!あだ名付けようよ。」

「え〜。」

「道のみを取って、ミィ君なんてどう?」

「…。まぁ、良いけど。」

「ねぇ、私のあだ名決めてよ。」

「…。冬の雪の、ふを取って、フウ。」

「良いね!」



「確かにそんな事あったね。」

「あの時結構、俺は救われたと思う。 」

「そう?そんなに?」

「あぁ。」

あれが無かったら、俺は今、こんなに仲間がいなかったし、

あんなに虐められる事なんて無かったのに。

そんな事、どうだっていい。

今、こうして、話せてるのは、

こいつのおかげだ。

「でも、成長したね。」

「そうか。それを言えば、フウも。」

「僕は、そんなにだよ。でも、ミィ君は…。なんか、かっこよくなったね。」

「いや、全然。お前の方が、可愛くなったな。」

「…。」

「おい、フウ?」

「な、何でもない!もう、ミィ君はそういう事何処で覚えたの…? 」

「えっ?」

「何でも無い!」

どうしたのだろう。

俺は、何故フウが赤面しながら、怒っているのか分からなかった。

そんな怒ることか?もしかして今日女の子の日だったりして。

「懐かしいなぁ。あの時、ミィ君が助けてくれた事、まだ覚えてるよ。」


それは小学4年生の時だった。

「えー。雪ちゃん、自分の事僕っていうの?なんか男の子みたいで気持ち悪い。」

「本当は男なんじゃね。」

「オカマー!」

「オカマ野郎。」

「オカマ」

「オカマ!」

「オカマ。」

「うっ、ひぐっ、ミィ君…助けて。 」

「オ カ マ !」

「オ カ マ !」

「てめえら何言ってんだ?」

「うわ、頼。びっくりした。あ、聞けよ。こいつ、オカマなんだぜ〜。」

「何でだ?」

「だって自分の事僕って言うんだぞ。」

「バカか。男でも自分の事私って言う人いるし、なんなら、家に僕って自分の事言うメイドだっている。」

「えっ。」

「だ、だから、何だよ。」

「自分の呼び方ぐらいで性別付けたら、この世クソみたいになる。それに、そんなんで笑うやつは、嫌われるし、親にも違うって言われる。」

「そ、そうなのか?」

「あぁ。」

「…。雪、ごめん」

「私も。ごめん。」




「ミィ君。ありがとう。」

「どうだって事は無い。」

「そう。じゃ、帰ろっか。」


「おかえり。」

「ただいま。」

「どうですか?僕と一緒にお風呂でも入りません?」

「いや、良いよ。」

メイドA「あれ?いつもって行ってくるのに。」

メイドB「ちょっと。……。」

メイドA「あぁそういう事ね。ふーん。」

「何だよ。」

メイドA「いや、青春してるなって。」

「うるせぇ。」

メイドA「ふふっ、顔赤い。」




懐かしいな。

そういえば

あの時好きなのは、

「フウ、だったな。」

「何?」

「何でも。 」

秋の田舎編第1話 [完]

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