𓆣 scene 02
◇ ◇ ◇
『行きたいです!』
夏休みのサークルに向かう途中。飲みに誘った後輩からのLINEが返ってきた。
同期や気心知れた2年の後輩と飲む方が気は楽だけど、まだひよっこの1年もこうして少人数飲みに誘って仲良くしていかなきゃいけない。幹部代のつとめってやつだ。
中村は来るのかぁ……と、今返事をもらった後輩のことを考える。でかい図体のわりに大人しそうにしてる奴だけど、まだ猫をかぶっている気がする。というのも、1
ふたりは幼稚園から大学までいっしょの幼馴染らしい。東京出身だとそういうこともあるのかなぁ。サークルとか全体飲みのときは距離を置いてるみたいだけど、隠れていっしょにいるのをよく見かける。というより、いちゃついている。聞くところによると付き合ってないらしいが、どうだか。
佐々木のほうが完全に中村に惚れてて一方通行に見えるけど、実はそうでもないようで、中村のほうもたまに佐々木に見惚れてたり、彼氏面で牽制したりしている。いや、これは俺の幻覚か? 3年の中では嫉妬といじり対象のコンテンツと化しているふたりだけど、後輩いびりでサークルをやめられたら困るのでまだそっとしておくことになっている。でも、今日、もしかしたら根掘り葉掘り聞いていいのかも!? 野次馬根性と幹部代の責任のあいだでゆれる。
なんで付き合ってないのか、それともホントは付き合ってるのか。そもそも、好きじゃないなんてことある!? 別に女子の中で一番ってほどじゃないけどかわいいし、愛嬌があって、まぁ……体は……背が高くてすらっとしてるから、むちむちがタイプならナシになる、けど、そんなんで一途な幼馴染属性の女に!? 惚れてないことが!? ある!?
「ちゃんと押さえててね」
「……わかってる」
脳内キャプション芸をさえぎるように、歩く先から声が聞こえた。
見れば、ちょうど中村と佐々木らしき背中だ。植込みのところで肩ぐるましている。
――…肩ぐるましている!?
「もっとちゃんと押さえててよー。落ちちゃう」
「……ッ十分だろ! いーからはやくとれよ!」
なにやってんだ!?
並木のまえに慎重に歩いていく中村たちを見て、あーセミでも取ろうとしてるのかと納得するけど、いい歳した男女がセミ取りで肩ぐるま!? という納得できなさがおさえられない。
佐々木、スカートだし。長いのをまくってて、あらまぁ……。
「とれたよー」
「じゃ、はやくおりて……」
「みてーかわいいね」
「みた。おろすぞ」
「まだだめ♡」
「! や、は……ッちから入れんな!」
「ちゃんと押さえててくれないから~」
「はやくおりればいいだろ! わ、ばか、熱いんだよ……ッ」
「へへ、ふともも、好きなんじゃないのぉ?」
「……っ」
俺からはみえないけど、たぶん顔を真っ赤にしてるだろう中村の顔が浮かぶ。
「はやくおりろ」
「ゆっくりおろさないとパンツ見えちゃうよ、浅黄くんに」
「……ゆっくりするのでおりてください」
「もうちょっと♡」
奴らの後ろをそっと通りすぎるとそんなことを延々とやっていた。とりあえず中村は飲みでシバく。
――…中村。
……むちむちが好きでも問題なさそうだなアイツ。
+ the End? +
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