☂ scene 07

  ◇  ◇  ◇



「浅黄くん、紙あげる」


「あ、りがとう」



 あの日から1週間たとうとしている。で、した会話がこれだけ。

 すこしだけ遅刻した授業の出席用のシート、俺のぶんをくすねていたのをこっそり渡してくれた。無視されるでもなく、フツーにほかの友だちといるときの千歳の感じで接してきて拍子抜けした。むりやり隣に座ってくることもなかったし、「いっしょにかえろ」も言われなかった。


 千歳のことだからすぐ大人しくなるとは思ってなかったのに、あっさりと欲しかった平穏がおとずれて変な感じがする。


 それに静かにしている千歳をみることがふえて、だまってればそれなりに大学生っぽく見えるんだな、とか思うようになった。俺のそばにいるからガキっぽく見えてただけなんじゃ、と気づいてしまって、自分も千歳にとっての足かせだったなんてすこし情けない。


 あと、服あんな感じだったけ? とか、髪巻いてたっけ? とかここ数日で気になる変化はあるけど、気にしないようにしている。

 幼馴染でいつまでもつるんでても、なんにもならないんだし。


 せいせいした、と思う。まだ実感ないだけ。


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