☂ scene 03
◇ ◇ ◇
決戦の日。幹事たちのバイト先の系列を紹介してもらったらしく、なんていうか大人っぽい雰囲気のカフェバーに集まることになった。
はじめての合コンは男側がスベり倒すとかよく聞くけど、女の子たちも気を使って盛りあがってくれて、それなりにいい感じですすんでいる。
きれいな格好した女子とこういう場でまじまじとむきあうと妙な緊張感はやっぱりあって、だけどクラスメイトの女子と喋ってるときには得られない栄養がとれてる気がする。
「よっす、中村。どう? どの子狙い?」
トイレに立ったとき通路で小野寺に話しかけられた。
これ……コントでよく見るやつだ。たいてい場所は女子トイレのパターンだけど。作戦会議ってやつ?
「うーん……そっちは?」
正直、合コン事体に満足してしまって、どの子がいいとかいう段階じゃない気がする。けど、幹事にわるい気がしてはっきり言えなくて話題をなげてしまった。
「俺は幹事の石神ちゃん。もともと狙ってたから」
「バイトいっしょならフツーにメシ誘えばよくね? ライバル増やすだけだろ」
「いや、幹事ってひと集めたり店決めたり、当日も一応ちゃんと盛りあがるか見とかなきゃいけないからハントする側じゃないのよ。幹事同士はいろいろ協力して準備するし。吊り橋効果的なの狙ってんの」
「へー」
「で、お前は?」
「あー……」
「あんまイイと思う子いなかった感じ?」
「や、そうじゃなくてフツーに合コンに圧倒されたといいますか……」
「あはは、素直でかわいいな」
和ませてくれてるみたいでほっとする。幹事やるだけあってコミュ力あるな、こいつ。
「そもそも中村ってどんな子がタイプよ?」
瞬間、不可抗力で具体的な女が「浅黄くーん!」と頭のなかに乱入してきて慌ててかき消す。
お前なわけねーだろ、絶対。
「……落ち着いてて大人っぽいひと?」
「お姉さん系ってこと?」
「……そう、かな?」
「なんでさっきからハテナつけてんの? ま、いいけど。つーことは……」
そこで言葉をきった小野寺は、クイっとゆびを右にながしながら続けて言った。
「……かな?」
たぶん、俺の右ななめに座ってた子をしめしてるんだろう。まあ、たしかに髪とか服とかしゅっとした感じだったし、よく笑うけどうるさい感じはしなくていい子そうだ。
気がぬけた感じでヘラっと笑った俺をみて、小野寺は勝手に納得したみたいでウインクしてきた。
「おけおけ。このあとカラオケ行くから任せとき」
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