第10話 わたしたち以外は
朝の
「ねーねー、せんせっ」
思い付いたアイディアを早く実行したくて昼休みまで待てなかったのか、圭夏ちゃんはわたしを連れて松平先生に声をかけた。
「なあに? 大鳥さん」
「あたし、新しい部活作るから、先生顧問やってよ」
「急に言われても……なんの部活かもわからないし……」
突然の要求に、困惑する松平先生。
こんな調子で、本当に顧問を引き受けてもらえるんだろうか――
と、わたしが一抹の不安を抱いた直後のことだった。
「別にいーじゃん。昨日、あんだけ部活をやれって言ってきたんだから、嫌とは言わせないよ?」
圭夏ちゃんが、松平先生の急所を的確に突いたのは。
「うっ……ちなみに、どんな部活を作るつもりなの?」
「演劇部だよー」
「演劇部……まあ、変な部活でもないし、構わないけど……でも先生、演劇のことなんてわからないし、細かい指導はできないわよ?」
「別にいーよ。今はネットもあるし、わかんないことは自分たちで調べるから」
「そう……ところで、部員は集まりそうなの?」
「わかんない。けど……千秋も入ってくれるわけだし、あと三人くらいならなんとかなるっしょ。ね?」
「う、うん……」
突然話を振られたわたしは、半ば反射的に頷いた。
でも実際、圭夏ちゃんがなんとかなるって言うと、特に根拠がなくってもそんな気がしてくるから不思議だ。
「……あなたたち、大事なことを忘れてない?」
しかし、謎の高揚感に浸るわたしとは対照的に、松平先生はあくまで冷静だった。
「え?」
首を傾げるわたし。
「この学校、あなたたち二人以外の生徒は全員、既に何かしらの部活に所属済みなのよ?」
「……あっ」
先生の指摘に、わたしと圭夏ちゃんは口を揃えて言った。
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