元魔王様とテルイゾラの地下空間 5
フォルトゥナとの会話により照れまくってしまったレイアとテスラ。
ジルの発言で自分達の好意が届いているのだとしっかり認識する事が出来たので娼館に入るのもそこまで否定的では無くなった。
女性陣を連れて目立っても面倒なので後の事はミネルヴァに任せてフォルトゥナと娼館に入る事にした。
地下へ行く権限を持っている女主人を見つけるのが目的だ。
「それでは行きましょうか!いざ桃源郷へ!」
「テンション高いな。」
隣りで息遣いを荒くしながらギラギラとした目を娼館に向けているフォルトゥナ。
目的を忘れていないか心配になる。
「寧ろジル様はテンションが変わりませんね。ご経験があるのですか?」
「止めておけ、この距離だと聞こえてても不思議では無いぞ。」
「そんなまさか…ひっ!?」
背後から怒気を感じてフォルトゥナが身体を震わせている。
とてもではないが振り返る勇気は無い。
「言っておくが入った事すら無いからな。」
レイアとテスラを落ち着かせる為に真実を口にしておく。
それを聞いて満足したのか直ぐに怒りは収まった。
「そ、そうですよね。僕も当然無いですよ。」
「意外だな。フォルトゥナならば何度も通っていそうだと思ったが。」
女性との縁を求めて足を運んでいてもおかしくないと思っていた。
「僕の事を何だと思っているんですか?」
「女好きのインキュバスだろう?」
「…間違ってはいません。でも僕が欲しいのは彼女なんですよ!遊び目的の女性じゃないんです!一生僕が愛し続け、愛し続けてくれる様な女性がいいんです!」
フォルトゥナが拳を握り締めて熱く語る。
あくまでも生涯を共に過ごしてくれるパートナーを求めているのだ。
「つまり娼館で働く遊女には興味が無いと?」
「そ、そこまでは言いませんよ?魅惑的な女性が大勢いる娼館ですから緊張もしてますし。」
熱く語っていた割りには感情がブレブレである。
簡単な接客対応でコロっと堕ちそうだ。
「あわよくばなんて考えていないだろうな?今は人質の方が優先だからな?」
「わ、分かっていますよ。」
フォルトゥナも人質の事は心配な筈だ。
自分の感情を優先する様な事は無いと信じたい。
「あら、いらっしゃい。お兄さん達二人かしら?」
娼館の中に入ると綺麗な女性が出迎えてくれる。
「は、はい!本日は宜しくお願い致します!」
初めての娼館にテンションが上がりつつ緊張しているフォルトゥナは敬礼して答える。
大きく開いた胸元にチラチラと視線が向いていて、女性慣れしていないのが丸わかりである。
「うふふ、娼館は初めて?可愛いわね。」
「きょ、恐縮です!」
「それじゃあこれがリストよ。初めてのお相手ならじっくりと選んでね。」
「あ、ありがとうございます!」
リストを渡してくれた女性にフォルトゥナが見惚れているので早く開けと催促してリストの中を見る。
「おおお!可愛い女の子ばかりです!」
リストには魔法道具で転写した女性の姿がずらりと並んでいる。
見目麗しい女性ばかりでフォルトゥナのテンション上がっていき、止まるところを知らない。
「当店自慢の娘ばかりだからね。見た目だけじゃなくてとても楽しませてくれるわよ。」
「そそそそれは楽しみですね!」
女性の言葉に想像を掻き立てられて鼻息を荒くしている。
ジルは女性に少し待ってもらってフォルトゥナを壁際に連行する。
「おい、フォルトゥナ。目的を見失っていないだろうな?」
「だ、大丈夫ですよ。演技です演技。」
「とてもそうは見えないが。」
一人で行かせなくて良かった。
これだと確実に暴走して目的を見失っていただろう。
「どうかしたのかしら?」
「いえ、あまりにも素晴らしい女性ばかりでどの子にしようかと迷ってしまって!」
「うふふ、それなら決まったらまた声を掛けてくれるかしら?」
「分かりました!」
女性は他の客の対応に向かっていった。
再びジル達はリストの女性を見ていく。
「それでフォルトゥナ、女主人とやらはこの中にいるのか?」
「いえ、いませんね。そもそも女主人の指名は一見さんお断りと聞いた事があります。指名料もとんでもなく高くて相手に出来るのはごく一部だとか。とんでもない美貌を持つ美しい女性ですよ。」
「成る程、簡単には出会えないか。」
残念ながらリストには女主人は載っていなかった。
簡単に出会える様な立場の者では無いと言う事らしい。
「女主人に出会えないのであれば仕方ありません。ここは一旦普通に娼館を楽しむと言うのは如何でしょうか?」
「如何でしょうではない。それはまた今度お前が一人で行け。いないのであれば帰るぞ。」
真剣な表情で提案してくるフォルトゥナだが、そんな提案にジルが乗る訳も無い。
成果を持ち帰らずレイア達の下へ戻ったら何を言われるか。
怒られるのはフォルトゥナだけな気もするが、大人しく帰るのが正解だろう。
「そ、そう言う訳にはいきませんよ!誰も指名せずに帰るなんて娼館を訪れた男性としてあり得ない行為です!逆に目を付けられてもおかしくないですよ?」
「そう言うものか?」
「そう言うものです!」
フォルトゥナが深々と頷いて答える。
娼館の経験は無い筈だがここまで自信満々に答えるところを見るとそう言うものなのかもしれない。
「ならば口の軽そうな者を選んで女主人の情報を聞き出す事にするか。ベタ惚れ薬があれば簡単だろう。」
「一回では無くならないですからそれでいきますか。」
ジル達は二人の遊女を指名して個室に案内された。
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