魔王と言う存在。
私は杏子さんの幸せを考えて、ある答えを出した。
最も幸福なウチに、最も幸福なままに、死ぬ事。
それは例え、人間に戻ったとしても、魔王のままでも。
それしか、この世界では杏子さんの勝ち筋が無かった。
どんなに考えても、ソレが最適解だとしか出なかった。
どんなに善行を積んでも。
どんなに徳を積んでも。
魔王は魔王。
人を殺してもいなければ、実害を与えた事も無い。
犯罪を何1つ犯していないのに、極悪人扱い。
人が、世界が変わる様に動いた、願った。
出来るだけの事を、ありとあらゆる事をした。
知識人からも知識を借り、あらゆる宗教を鑑み。
出た答えは、杏子さんの死。
例え人になっても、強制不妊手術が施行され、監視は一生続く。
また、魔王に戻るかも知れない。
極悪人でも犯罪者でも無いのに、ココの人間は一生恐れ、一生排除しようとする。
あの子が死ぬまで、一生。
「斉賀さん、魔王さんの家が」
《冴島さん、杏子は人として生きて、幸せになれたと思いますか》
「斉賀さん」
《例え人として生きていても、永久に監視され、死ぬまで批難され続ける。あの子に心は有ったんです、ずっと、自分の心を無視するのが得意なだけだったんです》
「俺は」
《冴島さん、杏子は分かってくれると思うんです。二条君も、富和君も、だから恨まれる事は恐れて無いんです。でも、1つだけ不安なんです、ちゃんとあの世界に転生してくれるかどうか。こんな私の願いだけで、あの子達が転生出来るのか。別に夢物語だと思って頂いて構わないんですけど、生まれ変わりを信じてるんです。出来たら、こんな世界じゃなくて、あの優しい世界に》
「俺も願いますから、泣いてくれませんか?」
《何故ですか、杏子は幸せになったのに。やっと、開放されたのに》
「だって、斉賀さんは寂しいでしょう、杏子さんが居なくて」
《清々してます、やっと悩まないで済むんですから》
「けど、大好きでしたよね」
《だから、コレは喜ぶべき事、祝い事、祝杯を上げないといけないんです》
「それは後にしましょう、まるで斉賀さんが計画したみたいに思われますよ」
《考えてはいました。ずっと、そして願っていました、叶う事を》
「じゃあ、次は斉賀さんの幸せを考えましょうよ」
《何故ですか、借りにも友人の死を願った私が、どうして幸せなんかを》
「杏子さんは向こうでも願ってると思いますよ、斉賀さんの幸せ」
《そうですか、どうも、もう帰ってい》
「俺、一緒に居ますから、泣いて下さい」
《だから、どうして》
「死にそうで、泣きそうな顔してますよ」
《死ぬ気は無いですよ、コレからの事も有りますから》
「じゃあ、俺も手伝います」
《結構です》
「お願いします」
《何故》
「好きだからです、魔王さんは人として、アナタには恋愛として」
《すみませんが、間に合ってますので》
「杏子さんの為に、幸せに」
《アナタに杏子の事を語られたくない、帰って下さい》
「じゃあ俺の為に、一緒に幸せになって下さい」
《どうやって?こうなる様に、全て》
「知ってます、けど、だからこそ幸せになっても良いと思うんです。全ては杏子さんの為、そして本当に杏子さんの為になったと思っているなら、アナタは幸せになるべきなんです」
《あぁ、直ぐに事情聴取が行われるでしょうし、したいならどうぞ》
「幸せにします、大切にします、大事にします。裏切らないし離れない、好きです、愛してます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます