第18話◆元魔王、こっそり視察に行く3
ライズ領の私設駐車場を視察した翌日、幌馬車にゆられてカフカ領との境にある共同駐車場へ。
その際に私設駐車場での良かった点、気になった点、改善策などをエクセル叔父上やヘンリエットさん、正宗を交えて意見交換した。
そうして作成したものをベースに、次の共同駐車場を視察しようと決めた。
「つきましたよ」
「ありがとう。やはりのんびり旅だとここまで半日ちょいかかるね」
「領の外れから外れですからね」
正宗とヘンリエットさんがそれぞれ答える。
駐車場から辺りをぐるっとみると、遠くのおやまに太陽が隠れる寸前だった。
たしかに端っこと端っこだもんなぁ。
現代日本みたいな高速道路があるわけじゃなし、あっても高速移動馬車とか馬さん可哀想すぎるだろ。
この辺は転移門設置とかしないとなんだろうけれど、基本転移門は国主体で一つの国にメイン1つ、サブ2か所までが暗黙のルールだし、各パーツがアーティファクトで出来ているので量産は無理。
初期運転に使う魔力も膨大なので、作れても10年に一度くらいだし、その前に使ってる転移門のパーツ交換で部品持っていかれるし。
以前、魔族国へ行くための貿易街の転移門は小さいものだったしパーツがあったので運が良かっただけだしな。
「さて、先ずは掲示板みようかね」
「僕もいくよ」
ヘンリエットさんと正宗が駐車場の手続きをしていると、駐車場の魔導灯が一斉に灯りをともした。
夕暮れから夜の9時くらいまで明るくて、それ以降は就寝に邪魔にならないよう灯りが弱くなるよう設定されている。
それ以降起きていたい人は、自前の手持ち魔導灯を使うことになっている。
「なになに……?『ジャイアントボア目撃例多数:カフカ領側1キロ圏内』『山狼の群れの目撃例あり:ライズ領側』」
「『旅の冒険者への依頼:近隣の魔物討伐。1匹ごとのレートは詰め所まで要確認』へー、こんなのまでやってくれてるんだ」
「駐車場ごとで稼いだお金は整備と周辺の安全にも使われるので、いい案ですね」
「ああ、国や領の公共施設の手助けをしたってだけで貢献度があがるってことか」
「そうそう」
わりと知られてないが、冒険者各自には国や領、民への貢献度が細かく設定されていたりする。
ランクアップのための隠れ要素でもあるので、実力があっても貢献度が低い。つまり素行不良や反抗的だとそれが全体得点からマイナスされるシステムだ。
なので、実力はあるのにランクアップ試験に落ちてたりするやつの素行は大抵悪かったりする。
これは最初に冒険者登録する際、こっそりパパが教えてくれた。
「めんどくさくてもお国に媚び売った方がいいよ」と。
今じゃその媚売る相手がパパっていう身近な難関になっちゃったけどね。
「すいませーん。兵士さん。この依頼って受ける冒険者さんいるんですか?」
僕は素直に掲示板の傍にた兵士さんに聞いた。
「ああ。ジャイアントボアの場合、たまに手前で狩ったけれどどうしようって冒険者が相談にくるから、報奨金渡して解体してもらって、素材は冒険者、肉はこの駐車場にいる全員に振舞われたりするよ。俺らはラッキーデーって言ってる」
「たしかに。大きいから串肉にしても十分な数はあるし、冬ならスープにできますもんね」
「ウルフの場合、素材がキバと皮なので肉は少ないし、あっても干し肉にしかならないけどねぇ」
「数いればそれなりに細かき刻んで野菜と一緒に煮込みスープに出来るんですけどねぇ」
「この共同駐車場に振舞うなら最低でも10匹いないと、だねぇ」
僕らはお礼をいって兵士さんと別れた。
エクセル叔父上はジャイアントボアのハンバーグ食べたかったねぇ、なんてのんきなことを言っていた。
まぁここだと串肉か端肉をスープに入れるだけだろうしね。
「狩ってきましょうか?」
「え?」
「傍にいるんですよ。さっきからでかいの2匹。【
駐車場をぐるりと見回しても、ほぼ個人商か商隊のみだった。
ライズ領側とカフカ領側にも兵士は常にツーマンセルで詰めているが、ジャイアントボア2匹とか倒せるかどうかわからんしな。
「安全性考えると討伐した方がいいよねぇ?」
「そうですね。んじゃちょっと行ってきますよ。おーい、マサー。おしごとー」
「メルク様。なんなりと」
僕と正宗はそれぞれのジャイアントボア退治にこっそり駐車場を出るのだった。
決して、エクセル叔父上がハンバーグとかいうから食べたくなったわけじゃない……ぞと。
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