第15話◆元魔王、正宗と貞宗と銘打つ

「所でお前、今まで何してたのよ、ホント……」

「先ほども言いましたが、右腕様と共に世界各地を回っておりました。主に自身のスキルアップや修行の為です。その過程で貞宗を作るスキルを開発しまして……」

「作られました」

「はー。僕の分身体エイリアスの中で一番の頭脳派のお前が修行……」

「メル様の事は逐一アリスよりブラザーチャットにて確認をしておりましたので、このままではいけないのでは?と右腕様に相談したところ、『宜しい、ならば修行だ』と……」

「右腕……あいつ脳筋に磨きがかかったか?」

「騎士団長様も途中までご一緒でしたが、ひ孫様が生まれたとかで一目散に実家へ帰られました」

「……」


 子煩悩だったからなぁ、騎士団長。

 素材集めの強行軍も子供たちの為に集めていた所もあるしなぁ。


「よし、できたっと」


 正宗と話しながらも、魔力による閉鎖空間を作り、それ自体を高温の炉にして世界各地でゲットした魔鉄、魔鉱石、魔石、魔宝石なんかをアレソレして3振の刀を作り上げた。


「正宗は太刀ね。銘は虚空。属性は乗らないけれどその分切れ味抜群、空間だって切れる。根性だせば大規模破壊魔法もキレる……はず」

「ありがたく賜ります」

「貞宗はこれね。脇差・銘は黎明、短刀・銘は継承。こっちは全属性乗っける事が出来るぞ。二刀流スキルも上げるから使いこなせ。貞宗にはフロレアルの専属になってもらうので、正宗とアリスについて学ぶように。大きくなったら打刀つくってあげるね」

「はっ!フロレアル様に害なす愚か者は、この貞宗が心火を燃やしてぶっ潰します」

「……物騒な事は控えるように。あと証拠は残すなよ?」

「心得ております」


 二人にはそれぞれ、地龍の革で拵えた鞘と、ミスリルリザードで作られた腰に吊るすベルトをプレゼントした。

 早速腰につける二人はさすがというか、刀がぶらぶらしないし音もたてない。


「とりあえず二人には仕事関係の記憶を共有するから、ラーニングしといて。あ、部屋はどうする?僕の横で相部屋にする?」

「そうですね、その方が良いかと」

「我が主のお心のままに」


 ……貞宗が僕の事を我が主とかいいだしたし、それを聞いた正宗が「しまった、その手が!」て顔をした。

 もう何も言わないから好きに呼んでよ……。


「貞宗は正宗のミニチュア版と考えていいの?性能的に」

「そうですね。私の能力で作りだしたので私を超える事はないかと」

「まぁバージョンアップしたいなら協力するよ」

「「ありがたき幸せ」」


 揃って頭を下げる正宗と貞宗。

 とりあえず、この屋敷の間取りは共有情報から得たとおもうが、僕の寝室の隣へ案内した。

 僕のプライベートルームは屋敷の北側にあり、工房も兼ねているので3階建ての上下をぶち抜いて移動できるようになっている。

 しかも外部の人間は3階の寝室からしか入れないので、余程信頼している人間しか入れないようにしている。

 だって、猛毒とか、ちょっとした刺激で対消滅するようなヤバイもんおいてるからさ。

 3階部分は完全に寝室で、その手前にはキッチンと水回りと応接セット。

 衝立を挟んで奥にはキングサイズのベッドに、視覚阻害付きの階下の工房へ行くための扉がある。


「この扉から2、1階の工房にいける。お前らも登録しておくので何かあれば家族を連れてここにこもるように」

「「はっ!」」


 一応工房は核ですら防ぐシェルター仕立てにしてあるから、軍隊が全員大規模破壊魔法を撃ちこんでも大丈夫な造りにしてるんだよねぇ。

 いやだって、ロマンでしょ?シェルター。


「で、この隣がお前らの部屋な。一応基本家具だけはセットしてあるんで、好きなようにカスタムしなさい」

「「はっ!」」

「あとは専用の冷蔵庫、冷凍庫、保管庫、刀掛けあたりかな。この部屋は応接間とキッチン、寝室で別れているのでキッチンの方にある程度は置いとくよ」

「「はっ!」」


 さっきから「「はっ!」」しか言ってないが、まぁそのうち慣れるだろう。

 僕は何もないキッチンに、冷蔵庫と冷凍庫、食器棚や調味棚、調理道具を置き、キッチンに繋がっている保管庫にもにもチスル食料を入れた。


「お腹すいたら作って食べなね。あとこれ。僕が作った保存食とか料理とかが入ってる魔法鞄マジックバッグ。時間経過なし、容量無制限で腰ベルトにつけれるポーチタイプにしておいたよ」

「「ありがとうございます!」」


 ……うん、まぁ。喜んでいるからいいか。



 その後、ソルティを伴って他の家族に紹介した。

 リーチェは二人を見て、やっぱりメル君の面影あるわねぇ、なんて笑っていた。

 そうかなー???







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る