第14話◆元魔王、パパになる2

 フロレアル・メルク・ライズと名付けられた男の子の誕生は、領を上げての祝賀となった。

 1か月後に誕生祭をやる事となり、それまでは家の中での厄払いの儀式や護法の儀式、神である神龍様へのご報告会、神殿での祝福等やることが多い。

 無論、僕も持てる力を持ってこの子が健やかに育つようするつもり。

 着るものには全部に防護魔法を掛け、揺り籠にも悪意を弾く結界もはった。

 リーチェとアリス、フロレアルが過ごす子供部屋にも床全体に結界魔法陣を刻み込んで四隅に魔宝石を組み込み、大規模破壊魔法でも無事なよう改造した。


「メル君、おちつこ?」

「へぁっ?あ、はい……」


 後は何かやり残したことはないかウロウロしていたら、リーチェから軽く手刀でこっつんされてしまった。えへへ。


「ベル君からもらっらお祝いの腕輪だけでも十分なんでしょう?」

「うん。あれすごいね。周りに漂うマナを取り込んで、本人に負担なし、ノーリスクで防御結界、反撃、パラライズ、拘束が一度にできるやつだよ。これの術式組んだ聖さんって本当すごい人なんだな」


 フロレアルの腕には銀色に青色の魔宝石が嵌った細身のバングルが装着されている。

 成長に合わせて自動でサイズを調整する上に、魔力を蓄えておくことも可能なのでいざという時の魔力電池にもなる優れモノだ。

 聖さん、魔道具師としてもやっていけるのではないだろうか? 本人は冒険者一択であるらしいけれど。

 そしてベル君からも、スキルスクロール100枚セットがやってきた。

 よく見ると、僕も持ってないんですけれどこのスキル……?てのがあって、ベル君曰く必要なら作るから言ってね!らしい。

 あとでお礼の品々と一緒におねだりをしてみよう。

 あとお礼の品にトテモカタイクッキーが指定されてるんだけど、is何??

 レシピと一緒に贈るか……。


 お祝い品と言えばじいじを代表に弟子一同からとパパ、ヘルメス叔父上、エクセル叔父上からも個人的に貰ったのでライズ領特産品である干物セットと地酒、トテモカタイクッキーなんかを直筆のお礼状と共に贈り返している。

 日を追うごとに少なくなっているが、以前の旅の道中で一緒になった冒険者の人らからの祝辞の手紙も届いてきているので、誕生祭でお招きするのも手だな、と考えた。


 所で、うちに執事がいないよな、っていう話をソルティにしたら、


「ほぼメル様が自分でやっちゃうからでしょ?」


 と返された。あ、はい、面目ないです。


「なので人を使う事を覚えてくださいね」


 て感じであれよあれよと執事が決まった。




「……って、お前か、1」

「はい。1でございます。エンディア様……、いえ、今はヴァンメルク様ですね


 僕の前に礼儀正しく、完璧なまでに一礼をキメた青年が頭を上げた。

 白い肌に青い髪、横髪だけ前に垂らして腰まである後ろ髪は細めの黒いリボンで括り、それを前に持ってきている。

 このロイヤル~な感じの青年は俺が最初に造ったエイリアスの1番目で、1という。

 ネーミングセンスのかけらもないが、名前を考えている暇がなかったともいう。


「今まで何してたの?僕が魔王城に行ったとき、いなかったよね?」

「ええ、その時は右腕様と世界各地を回っておりましたので」

「で、その横にいるのは?」


 1の一歩後ろに控え、未だに頭を下げている1そっくりな少年……10歳位かな?を見る。


「私のエイリアスで、1´と言います」

「1´と申します。ヴァンメルク様にこの命と忠誠をつくします」

「だから!ネーミングセンス!!!あと重いから!重いからそれ!」

「貴方様から生まれた私にそれを期待しますか?」

「……お前本当にいい性格だよな……」

「貴方様から生まれましたので」

「はいはいはい!解りましたよ。名前つけますよ!」

「「ありがたき幸せ」」


 さて、名前かー。うーん。


「正宗と貞宗で。日本で有名な親子の刀鍛冶の名前だ。あとで刀も打ってやるから」

「登録更新いたしました。これより我が身は正宗としてヴァンメルク様を主といたします」

「新規登録完了。これより我が身は貞宗としてヴァンメルク様を主といたします」

「正宗おまえ、自分のエイリアスなんか作れたんだね?」

「試したら出来ました!」

「作られました!」


 正宗と貞宗のWどや顔をみてなんかどっとツカレタヨ。

 あとで南北朝ヤンキーソードもかくやという刀をつくらねば。はぁ。

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