第13話◆元魔王・パパになる
それから半年、街道の補修整備も終わり、なんでか知らないけれどトテモカタイクッキーが爆売れしたりで忙しい日々を過ごしていた。
バルムング叔父上の方も簡易風呂や販売店舗をつくる駐車場をピックアップして実際に見に行ったりしてたようで、時折土産物が届いたりもした。
で、そんなこんな過ごしてる最中に一大イベントが舞い込んだ。
リーチェと僕の子が生まれたのだ。
そういえば、と疑問におもったのでソルティに聞いたことがある。
「僕の今の姿ってアバターなわけだけれどさ、僕純粋な魔族だよね。しかも元魔王」
「そうですね」
「リーチェとの子ってどういう扱いになるの?半魔族?」
「ああ、そのことですか。この世界だとアバターに準じるので、メル様とリーチェの子になります。つまりちょっと先祖に他種族がいる人間の子、になります」
「は?他種族?」
何それしらん、初耳なんですが?
「私、リーチェの体調を整えたりすることがあるでしょう?その時にリーチェの魔力に違和感があったので、少々血を貰って血族をたどったことがあるんです」
ソースコードをたどるようなものなので簡単でした、とかいう元日本人派遣OLこわい。
「あの家族、昔の召喚勇者様と縁があったようで、その血族でしたよ」
「はぇぇぇぇ……」
そういえばリーチェの最終冒険者ランクはA+だったな。
ただの村娘が魔法適性があるってだけでは滅多にそこまで上がらない。
という事は召喚勇者の血の濃さもあったんだろうな。
なるほど、弟妹がおかしいステータスなわけだ。
「リーチェの弟妹には私の手の者を師として派遣してますが、2~3年もすれば召喚勇者には届かないものの、民間勇者になれそうですって」
「……そうなんだ」
あと、ソルティの部下、ほんとうに優秀な人材しかいないな。
クッソ羨ましい。魔王時代に有能な部下を沢山欲しかったよ!
リーチェは玉の様な男の子を産んでくれた。
髪の色はリーチェに似た綺麗な草色だが、先端と所々に金色がのぞいている。
あと、この世界の赤子ってね、1年たたないと瞳の色が固定されないんだよね。
全種族、動物、魔物に至るまでこれは一緒。
流石に魔物や動物は1ヶ月くらい、繁殖力旺盛な小動物は1週間で固定されるんだけれど。
赤子特有の暗めの青色。
猫でいうキトンブルーだ。猫は2ヶ月くらいだったかな。
「リーチェ、ありがとうね。僕に家族をくれてありがとうね。結婚できなかったらどうしようって、魔王時代にうっすら思ってたし……」
「あらあら。元魔王様がこんなに泣いちゃって……」
赤子を抱っこしたリーチェを抱きしめながら大泣きした僕に、リーチェは寝巻の袖口で涙を拭いてくれた。
「パパになったのよ、メル君」
「うん……うん!」
「いっぱい愛してね」
「うん……うん!」
「私の今後に関してはアリスがそのままついてくれるし、ソルティの配下の人も
「うん。お給料三倍にしとくね」
「……おちついて?まずは抱っこしようか」
「うん!」
見た目は15歳になっても中身は200歳ちょいとはいえ、初めての子だ。
もうほんとに、存在そのものが愛おしい。
おっかなびっくり抱っこすれば、赤子はくあ、とあくびをした。
「名前、考えておいてね」
「うん!」
余りのうれしさと感動でさっきから語彙力が破砕されてるけれど、気にしないよ!
その後、3日間悩みまくったあげく、決まったのが
フロレアル・メルク・ライズ。
新春に生まれ、新緑の髪を持つ子にぴったりな名前である。
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