第8話◆元魔王・領地経営する8
伯爵邸には庭が3つある。
一つは入り口用の門から屋敷に繋がる30Mほどのアプローチの左右にあるメイン庭園。
一部が迷路になっていて、よくグラティとソルティが鬼ごっこをやっていたりする。
迷路の何か所かには小休止できるベンチや小ぶりのガゼボもあり、二人はそこで昼食やお茶を飲んでいることが多い。
その次ぎは中庭。
屋敷はH型になっているのその左右に面している、ちょっとした森みたいな感じに作ってあった。
森の中にあるテラス付きの8畳間だ。
テスは鍛錬の後、そこに設置してある簡易シャワールームで汗を流したり、リーチェが散歩の休憩場所として利用しているので、二人の私物も多い。
そして裏庭。
裏庭と言っても屋敷の裏手がほぼ山林なので、その入り口みたいな感じなんだけれど、僕がよく利用するのはこっち。
他のガゼボよりも大型で四角く、山から流れる川に突出して作られている四阿だ。
寒くなると周りに厚手のタペストリーが下げられるので、中央にある焚火台で暖かいお茶が飲めるようになっている。
今回人数もいるので裏庭でアフタヌーンティーみたいにお菓子と軽食、お茶も果実水も数種類用意し、サーブするメイドも数人、控えていた。
その中にラクシュもいるんだけれど、意外と違和感がない。
「エクセル叔父上、早速ですが明日からの行程に関しての打ち合わせを行います。軽食やお茶は控えているメイドに言って好きなものを召し上がってください」
「ありがとう、楽しみにしているよ」
エクセル叔父上は早速傍にいた緑の髪のメイドにお願いして、サンドイッチと焼き菓子を1種類ずつ、飲み物はミルクティを頼んでいた。
「こちらが領地の地図で今回行くのはここになります」
と、僕はB全サイズの地図をひろげた。
かなり細かいとこまで記載されている自信作だ。
この領地に来た時にテスと一緒に【
魔王時代にも魔族国全土の細かい地図を作製したなぁ、と懐かしみながらやっていた。
「ふむ、一応点々とではあるが村はあるのだな」
「そうですね、ただここら辺は魔族国にも近いし、船で3日あれば来られるので、割と移住者もいますし、その分混血も多いですね。あとは亜人種……竜人や獣人の村もあります」
世界地図を見ればわかるのだが、手国はでっかい本土と諸島で成り立っていて、この領は魔族国側に突出した半島なんだよね。
なので魔族国やメッセラ、ガルドからの移住者もいるにはいる。
小さい村だし少数民族ばかりなので、僕が領を継いであいさつ回りした時に、不便はないか、街の方に来るなら支援すると言ったんだけれど丁寧に断られ、納税はお金の代わり森近辺の魔者の間引きや間伐をお願いしている。
定期的に魔物の素材や乾燥させた木材、薬草なんかを納品してもらっているのだ。
「なので、旅人が泊まれるほどの規模の村がない、んですよ」
「まぁそうなるねぇ。なら私財投じて作るしかないか」
亜人種を忌避する
話してみると気のいい兄ちゃん姉ちゃんおじちゃんおばちゃんなんだけどなぁ。
子供らも可愛いし。ただ、ジャイアントキャラピラーの幼虫(まるまったやつ)を投げて遊ぶのはやめろな??
「一応道を整備して私設駐車場をつくります。道の整備は各村から現金収入を得たいものが居れば雇い入れ、あとはこちらの事情を知っている業者が居るのでそこに依頼します」
「うんうん。雇用を促して経済を回すのは良い事だよ。サリと本当に考え方そっくりだね」
「パパも公共事業と福利厚生には力をいれてますからね。パパが国王になったことで、犯罪奴隷以外の労働基準法も変わったし、少しずつ国民にも生活の余裕が出てきたと聞いてます」
「うんうん。サリは弟子の中でもトップクラスで頭がよかったし、その手のシステムを作り上げるのも得意だったしね」
前提として歴代の召喚勇者様の学習システムとかあったけれどね。
なかなか貴族連中を黙らせられるのは難しかったのよ。
「それが終わったら僕とメル君のところを結ぶ街道の駐車場作りかな?」
「それは僕がやっちゃおうかなと」
「あー……」
森の中の私設駐車場を通ってもメイン街道にはつながるので、森ルートはあくまでもメイン街道を走る荷馬車が多いから迂回ルートなだけで。
メイン街道は元々道が整備されてるので、あとは領の境目にちょっとした休憩場所を作ればいいだけ。
「なのでこれが予想完成図です」
と、一枚の紙にかいた予想完成図を見せる。
メイン街道の僕の領とエクセル叔父上の領の両方に休憩所兼土産物屋、食事処を設置する簡単な上下線サービスエリアだ。
「うん、いいね。この土産物屋では自領の特産品や工芸品を売ればいいんだね?」
「ええ。名物の蒸かし饅とか売ってほしいです。あれ、美味しいので」
「かぼちゃとブラーマのそぼろ餡饅頭だね」
「ですです」
僕とエクセル叔父上の話を横目に、お茶を楽しんでいた他のメンバーが楽しそうで何より、と暖かな目で見守っていたことを僕らは知らない。
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