第3話◆元魔王・領地経営する3

 テスが帰ってきてから1週間後、僕とテスとシィともう一人は領地の端っこに来ていた。

 僕の家から領地の端っこまで歩きで丸一日くらいなんだけれど、4人とも【身体強化】と【風魔法】により休憩込で半日で辿り着いた。

 テスはソルティから色々と魔法を教わっているようで、ほんと魔法剣士の剣士よりなスタイルになっている。


 もう一人のメンバー、ラクシュはソルティが国から呼び寄せた配下で、黒髪金目褐色羊の角を持つ純粋魔族。

 青い肌でないのはそういう種族らしい。

 羊でいうブラックフェイス種みたいなもの、とはソルティの言葉だけれど納得してしまったよ。

 そのラクシュは斥候タイプで何かと便利だからとソルティが付けてくれた。

 たしかに休憩しようかと腰を下ろした瞬間、ご飯のセッティングが出てきたし、先行して何匹かのブラーマという大鶏を狩ってきてくれた。

 なんだろう、この至れり尽くせり感。

 今まで何でも自分でやってたせいで、なんか申し訳ない気がしている。


「ラクシュの仕事の一環なので」

「そうですよ、旦那様。何なりとお申し付けください」

「あ、はい」

「その時は頼みます」


 というやり取りがあったので、割り切れないまま割り切りつつ、現地へ着いた。


「ちょっと上から確認してくるね」

「はい」

「行ってらっしゃいませ」

「お願い致します」


 僕は【飛翔フライ】の魔法で上空まであがると、周りをグルリと見渡した。

 ちょっと遠くにみえるのはメイン街道。

 そこまで距離にして200mくらいかな。

 一応こっちの海沿いルートもあるんだけれど、途中の漁村に用があるか、この森に用があるかじゃないと使われない道なんだよね。

 なので、遠くの街道と海沿いの中間地点……今いる位置辺りにちょっとした私設駐車場を作ろうかと思っている。

 安全優先なので採算は取れなくてもいいし。


 そう決めて、地上に降りることにした。

 降り切る寸前、テスが手を差し出して引き寄せてくれたんだけど、なんかね、ドキドキするよね!

 旅をしている時もなんだかんだで気にかけてくれたり手を掴ませてくれたりしてたけどさ。

 テス、ほんとそういうとこだぞ!てなるわ!


「どうした?メル坊」

「なんでもなーい。この位置あたりに私設の駐車場というか、フリーの休憩所作れればいいなぁ」

「フリーの休憩所?」

「うん。地球にはサービスエリアってゆーのがあってさ⋯⋯」


 日本のサービスエリアは大小含めて900近い数がある。

 小さいのは本当に駐車5台からだし、大きいのはあの有名サービスエリアだしで千差万別だ。

 僕がやろうとしてるのは小規模だけど宿泊施設のある駐車場。

 メイン街道に接続させたいので、その辺の工事計画とか伐採計画、森の中の調査と魔物の間引きから定期的な討伐なんかをあれやこれやまとめないとな。

 それを「こんなことしたいです!ハンコくれー!」てパパに見せに行けばいいのだ。

 パパもこの辺は気にしてただろうからね。


「海に抜けるメイン街道は隣の領へ直行する道だし、なんだかんだで交通量多いからな。脇道とはいえ宿泊施設があるなら利用客は見込めるだろうな」

「そうだな。それに、漁村とも連携が取れれば宿泊施設や土産物として魚の干物の取り扱いも出来るのでは?」


 テスとシィがそう言って頷く。


「ならメル坊。早速帰って報告だな」

「うん!」

「旦那様、1日頂ければここを起点とした森の魔物の種類と棲息分布図を作成、ご報告出来ますが⋯⋯」

「本当!?」

「ラクシュは諜報もやれるからな。生半可な魔獣や魔物なら返り討ちだぞ?」

「まじか!」


 さすがソルティの部下。


「では私も残ってある程度、驚異となる魔物を間引いておこう。遅かれ早かれ、森の管理は必要だからな」

「そうだね。シィ、ラクシュ、お願いね」

「「はっ!」」


 シィとラクシュはその場で片膝を着いて頭を下げたあと、瞬時に目の前から姿を消した。

 やる気満々だなー。


「明日の夜には戻ってくるだろうから、ご飯準備してまってよか」

「だな」


 僕らもまた、【身体強化】【風魔法】を使い、お家へ戻るのだった。


 帰ったら色々書類作らないとなー。

 頑張るかー。

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