第31話 人気者と再挑戦

 話したら何か分かるかもしれないな。

「ざっくりしか話せないが良いか?」

「お?私を頼ってくれるんですね?」

「やっぱやめた。風呂入ってくる」

「ちょ、ちょっと待ってください!聞きます!聞きます!真面目に聞きますから!」

 立ち上がる俺の服の袖を岩尾が掴み引っ張る。

「やめろ、引っ張るな、伸びるだろ」

「じゃあ、話してください!」

 経験上この状態になると風呂場までついてくるだろう。風呂場まで行って目の前で服脱いでやろうかな。この前みたいに。

 この前?いつだ?そんなことなかっただろ。

「翔野さん?流石に急にボーとされると心配になるのですが」

「なぁ、俺たち会ってからどれくらい経った?」

「二ヶ月ないくらいじゃないですか?」

「そうか」

 当たり前だが、何故かもっと長い時間交流していた気がする。

「えへへ、じゃなくて!なんで頭を撫でるんですか!」

「あぁ悪い、いつもの癖でさ」

「いつもの!?誰の頭を撫でてるんですか!」

「それはお前だけど」

「頭撫でてもらったの今が初めてですけど?」

 は?頭撫でてるだろ。いや、撫でた覚えがない。まただ、すげぇ不気味だし気味が悪いし、気持ち悪い。

「悪い風呂入ってくる」

 風呂で頭から水被って頭冷やすか。


「何やってるんですか」

 風呂に入って一時間俺はソファーの上で寝転がっていた。

「いや、頭冷やすために水を頭から被ったけど効果がなかったから熱い湯船に浸かってたら、だんだん頭がボーとしてきたから流石にまずいと思ったから風呂から出て服を着終わったところでぶっ倒れた」

 倒れた時の音で駆けつけた岩尾に肩を貸してもらいリビングのソファーまで移動したわけだが、我ながら本当に馬鹿なことをしたものだ。

「肩を貸すだけでも大変だったんですよ」

「本当にすまない」

「仕方ない人ですね。ゆっくりしてて下さい。晩御飯は私が作ります」

 不安しかないが時々料理を手伝ってもらっているから初めの頃のように炭を作ることはないだろう。再挑戦させる良い機会だしここはおとなしく。

「お願いする」


「判断間違えた」

 後悔する俺の前にはうどんが置かれていた。うどん自体になんだの問題もないのだ。

「具材がなぁ、」

「美味しそうじゃないですか!」

 どうやら岩尾はうどんにたこ焼きを入れると美味しくなると思っているようだ。まぁ、物の感性は人それぞれだ。残すのも勿体無いから食べるか。

「ほら、お前も座れ食べるぞ」

「はい、」

 岩尾が少し落ち込んでいた。ちなみにたこ焼き入りのうどんは俺は美味しいと思わなかったが、岩尾は満足そうに食べていた。

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