第30話 人気者と疑問

「翔野なに黄昏てんだよ」

 そりゃあ黄昏たくもなるだろうこれだけクラス中から殺気の困った視線を向けられているのだから。

 朝のHRの時間にうちのクラスでは中間テストを目前に控えていることもあり気分転換のために席替えを行ったのだが。

「なんでこうなるんだよ」

 席替えのくじを引いて今と変わらず窓側の一番後ろの席に決まり喜こんだのも束の間、クラスメイト達が席の移動をしている間俺の隣の席が全く動かなかった。

「ある意味運がいいな」

 そう、席替えをしたのに俺と岩尾は席替え前と同じ席のくじを引いたのだ。

 なんなら、前に飛羅廼が来て悪化したまである。初めの頃体育の時間も思ったけど男子は分かるだけどなんで女子まで俺を殺気に満ちた視線を送るんだよ。おかしいだろ。

「楽しそうな席だね」

 飛羅廼の隣の席には桂木が来ていた。

「仲良くしような」

 今までより疲れることを覚悟した。


「なぁ、翔野」

「なんだよ」

 席替えをした日の体育の時間俺と飛羅廼は卓球でラリーをしていた。

 ちなみに種目は男女別である。

「お前さ、入学式の次の日には岩尾さんに話しかけられたてたよな」

「それがどうしたんだよ」

「入学式の放課後何かあったのか?と言うか、何かあったんだろ言え」

 飛羅廼の問いかけに周りにいた男子たちがこちらに注目する。

「何もなかった」

「答える気がないんだな」

「答える物がないからな」

「だってさ、男子諸君諦めろ」

 やっぱり、他の男子から聞いてくれた頼まれたんだな。

「今回は諦めるけどさなんで岩尾さんと仲良くなったのか俺も気になるからいつか教えろよ」

「いつかな」

 そのいつかがいつ来るのか俺にも分からない。俺的にははそのいつかがが来なくていいな。

 ん?なんでそんなことを思うんだ?別にあいつが良いと言えば話してもいいだろうにそれすら嫌な感じがする。分からん自分のことなのに、

 前もあったよなこんなこと確かデジャブを感じた。なんかすげぇ気分が悪い。自分じゃない自分というのだろうか?この前から時々自分でも分からない思考や身に覚えのない記憶がある気がする。

「おい、どうした?ぼーとして。岩尾さんのことでも考えてたのか?」

「んなわけないだろ。ちょっと考え事してただけだよ」

 その日、ずっと考えていた。


「翔野さんずっと考え事してますね?」

「ん?あぁ、ちょっとな」

 家に帰り二人でくつろいでいると岩尾が肩を叩き聞いてきた。

「悩みがあるなら私が聞きますよ」

「お前は聞いてもらう側だろ」

「失礼な話を聞くくらい私にも出来ます」

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