第29話 人気者とレポート制作

「じゃあ、資料集めますか」

「了解」

 俺のクラスは翌日図書室にて二教科合同課題のレポート制作をしていた。

「お前のペアは岩尾さんなんだな」

 海外系統の本の中からスウェーデンの本を探していると飛羅廼が話しかけてきた。

「お互いに利益があったからペアになったんだよ」

「そんなこと言っていいのか?あれ」

 飛羅廼のが指をさしたほうを見る。

「すげーこっちのことを見てますけど?」

 そこには、こちらの様子を横目で伺う岩尾が居た。

「なぁ、翔野」

 真顔で飛羅廼がこちらを見てきた。

「お前声かけたりするなよ 。周りの奴らめんどくさい事になりそうだから」

「分かってるって」

 そういって飛羅廼は親指を立てた。

「岩尾さーんどうしたの?」

「ちょっおい」

 俺の静止も虚しく飛羅廼は岩尾に近づいて行った。

「いえ、私が勇気を出してペアを組んでくれないかと頼んだのにそれを利益があると言う理由で承諾してたことにショックを受けただけです」

「なぁ〜ひどい奴だな」

 二人の会話に周りの男子の視線が俺に向けられる。

「ほら、めんどくさいこと言ってないでさっさとやるぞ」

「ふふ、はい」

 満足したのか笑いながら俺の隣に並び机に向かう。

「注目されてますね」

「お前らのせいでな」



「お前ら居たんだな」

「神坂先輩こそ」

 レポート制作を進めていると横から神坂先輩が話しかけてきた。

「これらのクラスも図書室で調べ学習する予定だったんだよ。だけど、お前らのクラスと被ってたみたいだな」

 周りを見渡すといつの間にか2年生が図書室にいた。

「全く気づきませんでした」

「そうとう集中してたみたいだな。その様子だと俺のクラスメイトから見られてるの気が付いてないだろ」

 神坂先輩が指をさす方には5人ほど男子生徒がおりこちらを見ながらコソコソと話していた。

「ちゃんと調べ学習して下さいよ」

「それは本人達にに言えよ。そもそもお前らの距離が近いのが原因だろ」

「そうですか?私は普通だと思いますけど?」

 顔が近いと言うなら小声で話すのだから仕方ないし椅子の位置は二人とも動かしてないため普通だと思うのだが。違う、確かに近い。今思えば近すぎるのになんとも思わなかった。何故だ?そこまで集中した覚えはないのに。

いくら考えても分からない。諦めるか。

「それに見られるのはもう慣れましたよ。こいつのせいで」

「ちょっとそれには不満があるんですが」

「お前らがいいならいいけどさ」

「なんで納得するんですか!?」

 大きな声を出したせいで岩尾は先生に注意をされた。

 その後、特に何事もなくレポート制作は進み次の週には提出をした。

 俺たちのレポートは最高評価をされて戻ってきた。まぁ、学年一位と二位が真面目に作ったレポートだからな特に喜ぶこともないだろう。

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