第28話 人気者と海外
「翔野さんは寝ているときに見た夢は覚えていたいですか?」
学校でのババ抜き地獄から数日たち日曜に岩尾と家でゆっくりしていた。
「急だな、楽しい夢なら覚えていたいな」
「じゃあ、夢を見ている間は楽しくても夢から覚めたら悲しくなる夢はどうですか?」
「なんだその変な質問」
質問の意図がわからない岩尾は何が言いたいんだ?
「また聞きますからちゃんと考えていてくださいね」
「覚えてたらな」
適当に相槌を打ちながらなんとなくつけたニュース番組を見ていると人気俳優が結婚したというニュースが流れてきた。
「有名になると大変ですね」
「それをお前が言うか?学校の中で有...名人...なぁ、こんな会話前にしなかったか?」
あり得ないはずなのだ今日初めてこのニュースを見たのだから。だが、何故かこの景色に既視感を、この会話にデジャブを感じたのだ。
「何を変なこと言ってるんですか?2日経っても疲れが取れないくらいにあのババ抜きで疲れたんですか?」
「悪い、俺の気のせいだ」
「おかしな人ですね」
勘違いだと言って会話を終わらせたが心の中では納得がいかなかった。
絶対にあり得ないのに俺はこの景色を知っている。
「翔野さん?どうしたんですか?ボーっとして」
「あぁ、何でもない」
いくら考えてもわからない。きっと気のせいだろう。
「どうかしたのか?」
「英語と世界史の合同課題覚えてますか?」
「あのペア組んでレポート作るとかいうやつか」
知らされてからかなり時間がたっていたせいで完全に忘れていた。
「明日の日本史と英語の授業でそのレポート制作を始めるそうですよ」
「そんなこと言ってたか?」
「でしょうね。翔野さん寝てましたしね」
正直、授業を聞かなくてもテストで点数は取れる。実際入試試験の前に勉強してなかった。
「とりあえずどこの国を調べますか?」
そういえば、岩尾とペアを組むことにしたんだったか?
「どこでもいいぞ。お前こそどこか気になる国とかないのか?」
「私ですか?私もこれといった国はないですね。強いて言えばスウェーデンですかね」
「またあんまり聞かない国だな。なんでまた、」
「特に理由はないですよ。前にちょっと調べたことがあって他の人と被りにくいかと思って」
なぜだか理由を話す岩尾の笑顔は何故か、悲しそうなうらやむような顔をしていた。
「コーヒーでも飲むか?」
「お願いします」
「確か、砂糖二個でよかったよな?」
「よく覚えてますね?」
今度の岩尾の笑顔はいつも通りでホッとした。
「しかし、海外か... いつか、何処でもいいから観光に行きたいな」
キッチンでコーヒーを入れながらそんなことを呟く。
「スウェーデン調べて良さそうなところがあったら一緒に行きますか?」
「そうだなそれもいいな」
「ふぇっ?!」
リビングからひょうきんな声が聞こえる。
「お前っていつも俺をからかおうとするけど俺がそれに乗った戸惑うよな」
「仕方ないじゃないですか!いつも乗ってくると思ってないんですから!」
顔を赤くして声を荒らげる。
「そろそろ慣れろよ。ほら、コーヒー」
キッチンで注いだコーヒーを岩尾に渡して隣に腰を下ろす。
「いつか絶対に照れさせますからね」
「思ったんだがなんで俺がお前の誘いに乗っかるだけで戸惑うんだよ」
「だって本当だったら嬉しいじゃないですか」
「じゃないですかって知らねぇよ」
こんな陰キャと出かける約束をして何がうれしいというのだろうか。
「あなただって同じ気持ちのはずですですよ!」
「いや、そんなことはないから安心しろ」
「ひどいですよ!学校では人気者と出かける約束ですよ?!」
「人気者とか意識しても疲れるだけだろ」
「納得いきません」
岩尾そういいながらコーヒーをちびちびと飲む。
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