第27話 人気者とババ抜き
「トランプ持ってるから一緒に遊ぼ~」
立花先輩がカバンからトランプを取り出す。
「いいなそれは!スピードでもやるか!」
「なんで二人用の遊びなんですか」
「なんでダメなんだ?大会形式にすればできるだろ?」
時々この人が幼く感じるのは俺だけだろうか?
「ねぇ、こー君スピードってなぁに?」
「普通にババ抜きでいいでしょ」
ごく自然に無視したなぁ。
「翔野だっけ?これ配ってもらえるか立花ならばら撒くだろうから」
神坂立花先輩の手からトランプを奪い取って俺に渡す。
「きーせんぱーいこー君に無視された上にトランプ奪われたぁ!」
「おーおーかわいそうに神坂君はひどい奴だな」
菊池先輩に泣きつく立花先輩を見ながら少なくとも神坂先輩はこの先輩たちと一緒にいてよく今年もこの部活に入ったなと尊敬しながらカードを混ぜて配る。
カードを引く順番はじゃんけんで決め立花先輩→菊池先輩→立花先生→俺→岩尾→神坂先輩の順番になった。
「じゃあ、始めるか!」
なんで一番年上のやつが一番やる気なんだよ。
順調に各々枚数を減らしていき残るは立花先輩と岩尾に二人先に数字のカードを引いたほうの勝ちなのだが、
「こっちで...そろいました」
岩尾が申し訳なさそうにカードを引き揃ったカードを場に捨てる。
本来喜ぶべきところなのだが岩尾の顔には笑顔はなかった。それもそのはずである。ババ抜きをやって分かったがこの立花先輩は死ぬほどポーカーフェイスが下手だった。
「いやー残念だったな花梨。では、1位の私から罰ゲームを発表させてもらおう」
「あの、罰ゲームなんて聞いてないんですけど」
「翔野の言う通りですよ」
「罰ゲームをしようと決めたのは今だがゲームに罰ゲームはつきものだろ?」
自由だなおい。
「ちなみに君たちには拒否権はないからな」
「いや、ありますけど?」
「君の生物担当の教師を忘れたのかい?生野に限らずだがね」
おい、まさか。
「私の手にかかれば君たちの評定に欠点を付けることは簡単なんだよ」
なんでこんな人が教師出来てんだよ。今すぐこの横暴な教師から教員免許取り上げろ。
「では、花梨が最後から2番に上がるまでババ抜きをやってもらおう1番だと手加減をすれば簡単に終わって面白くないからね。でも一番の理由は姪っ子が負けたままというのは悲しいからだよ」
この人楽しんでやがる
「やっぱり親戚だったんですね」
「そうだよ。私の兄の娘でね。さぁ、早く2回戦をしたほうがいいんじゃないか?」
「確かにそうですね。次は、私が配りますね」
そこからは、まさに地獄だった。
俺、岩尾、神坂先輩は手加減してババを率先して引いたりしたのだが立花先生と菊池先輩が一切手加減をしないせいで終わった頃には19時を過ぎっていた。
「すっかり遅くなっってしまったね。気を付けて帰るんだよ」
「誰のせいだ?誰の」
「先生などの目上の人間には敬語を使うものだよ。生野君」
「すいません」
何気に菊池先輩と直接話したのは今が初かもしれない。
今は、そんなことはどうでもいいのだ。一刻も早く帰りたい。
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