第19話人気者と一夜

 岩尾が帰ってきたのは着替えを取りに行って1時間後だった。

「随分と遅かったな」

「女性には色々準備があるんです」

「風呂沸かしてるけど先に入るか?」

「翔野さんが先に入っていいですよ」

 お言葉に甘えて先に風呂に入らせてもらおう。


 今日は、異様に疲れた一日だった。

 クラスにやつに訳の分からない言いがかりをつけられて目玉焼きの乗った炭を食わされてマリ〇ーを20レース以上させられた。

 ゆっくりできる唯一の時間を満喫して浴室出る。


「次、入っていいぞ」

「わかりました。シャンプーとかどれを使ったらいいですか?」

「俺が使っているので良ければ風呂場にあるのを適当に使ってくれ。俺が浸かった後の湯舟が気持ち悪かったら入れなおしてもらって構わない」

「特に気にしないので大丈夫ですよ」

 岩尾が風呂に入っている間ほぼ無心でテレビを見ていると一つの疑問が浮かぶ。

 そういえばあいつ寝るときはどうすんだ?うちに来客用の布団なんてないぞ。

「お風呂ありがとうございました」

「ちょうどよかったお前布団はどうするんだ?」

「それなら考えてあります。切っても良い紙とペンを貸してください」

 大人しく紙とペンを渡すと岩尾は紙を4つに切って何か書いてなかが見えないように折った。

「この中から1つ取ってください」

「いや、なんだよこれ」

「どっちがベットを使うかクジで決めましょう」

「それは分かるがなんで4つ?」

「この中には二人の名前が書かれた罰ゲームクジがありますからね」

「なんでだよ!はぁ、俺はソファーで寝るからベット使っていいぞ」

「くじを引かない場合翔野さんと同じところで寝ます」

「分かった。これにする」

 深く考えずくじを引く。

「じゃあ、開けてください」

 ゆっくりと選んだクジを開く。最初にソファーという文字が見え少し安堵したが完全に開くとソファーという文字の後に一人の名前という文字が記載されていた。

「嘘だろおい」

「文句はなしですよ?自分で選んだんですから」

「分かってる」

 ここで抗議してもきっと譲らないだろうから諦める。

「どうします?罰ゲームは何がいいですかね?」

 時計を見ると11時を過ぎていた。

「先に寝てて良いぞ。俺はいつも12時過ぎてから寝るから」

「そうですかじゃあ、私も起きておきます」

「なんでだよ」

「私が先に寝ると翔野さんはいつまでも起きてそうですから」

 完全に行動が予想されてるな怖過ぎだろ。

「起きてても特に何もしないからな」

「別に構いませんよ」

 そこから12時を過ぎるまで二人でテレビを見た。

「そろそろ寝るか」

 ソファーから立ち上がり寝室に移動する。

「なぁマジで罰ゲームやるのかよ」

「くじを引いたの翔野さんですよ。大人しくクジを見せてください」

 諦めて岩尾に引いたくじを渡す。

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