第17話人気者の思い出
その日の5、6限は異様な雰囲気ななか終わり放課を迎えた。
帰りのHRが終わるとすぐに教室をでた。斉藤に呼び止められるかと思ったが雪芽に言われたのが余程答えたのかほぼ傷心状態だった。
荷物をまとめて教室を後にする。
昇降口ではなく保健室に向かう。5限の後雪芽が保健室に行った雪芽から呼び出しがあった。
保健室に到着しドアを開く。
雪芽がベットを隠すように引かれているカーテンの中から顔を出して来たのが俺だと分かるとカーテンを少し開け手招きをしてしてきた。
おそらく入ってこいと言うことだろう。
大人しく雪芽の指示に従う。
気まず。
カーテンの中に入り早数分沈黙が続いていた。
何か喋れよ!呼んだのそっちだろ。
「襲わないんですね」
「襲うわけないだろ」
「そうですよね。分かってるつもりなんです。だけど以前のことを思い出してしまって」
「まぁ、それは仕方ないだろ。お前が嫌ならおれの家に来なくてもいいからな。必要ならレシピ作るから言ってくれ」
「行きますよ。怖いは怖いですけど嫌じゃないので」
こいつは、すごく強いと思う。
こんな強い奴がリスカをしたくなるほどのトラウマを抱えるのは相当なことがあったのだろう以前聞いたのは精々物を隠されるなどだった。
きっと聞いているもの以外にも色々あったのだろう。
もしくは、可能性は低いがイジメが終わって強くなったのか。どちらにせよ彼女がされたことは、許されていいものじゃない。それに俺が思っているよりも何倍もつらい思いをしているだろう。
「わたし幼稚園の頃孤立してたんです」
岩尾が不意に話し始める。
「内気な性格でなかなか話しかけれず一人寂しく本を読んだり絵をかいて過ごしてたんです。でも、ある日から隣で一緒に過ごしてくれる人ができたんです。一緒に過ごすといっても話したり何か一緒にやるんじゃなくて、ただ横に座ってるだけだったんです。けど、それだけでうれしかった。暗い私の横に自分から来てくれる人がいるという事実だけでわたしは、救われた気持ちになったんです」
岩尾が話すのを静かに一言一句聞き逃さないように聴く。
「残念ながら小学校はその子とは別だったらしくお別れとなったんです。小学校からは、いじめが始まり完全に一人孤立しました。でも、いつか隣に座ってくれたあの子のように寄り添ってくれる人が現れると信じて過ごしてました。だけどそんなことはなく気がつけば高校生になってました」
「そいつの名前わからないのか?」
「もう覚えてません。名前はおろか顔すらも。せめてお礼くらいは言いたかったんですけどね」
「アルバムを見ればわかるんじゃないのか?」
「その子はアルバムにはいないんです。卒園前に引っ越したみたいで」
「そうか」
寂しそうな顔をして親指を握りしめるよう拳を握る岩尾に対してそれ以上声をかけられなかった。
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