第15話人気者の勝利宣言
「俺の父親は厳しい人で息子の俺に完璧も求めたんだよ」
話そうとか考えた訳でもなく自然と言葉が出た。
「昔から勉強にしても運動にしても一番でいろそう言い聞かされてきた。最初は1番をとったら褒めてもらえたしそれが嬉しかった」
自分でも不思議なくらいすらすら言葉が出た。
「小学校に入ってからはなかなか1番をとれなくなった。それを俺の父親は許せなかったんだろうな。死ぬほど勉強させられて死ぬほど鍛えられた。おかげで今では難関大学にも余裕で合格できるくらいの学力がある」
岩尾は俺の話を静かに聞いていた。
「だから、俺に勝つのは無理だぞ。できて俺と同じ順位だな。それも難しいかもだけどな」
「できますよ。次は1位になってみせます」
「そうか、まぁ頑張れ全教科満点」
「え?」
俺の発言に岩尾は大きく口を開けて呆然としていた。
「どうした?そんな間抜けな顔して」
「いやだって全教科満点って」
「そうだな。ほら証拠」
ポケットからスマホを取り出し父親にテストの結果を報告するためにとった写真を岩尾に見せる。
「こんなことあるんですね」
「高校の範囲はまあ終わってるからな簡単なんだよ」
「さすがとしか言えないですね」
「まぁ、そういうことだ。じゃ先に教室に戻っとくわ」
「分かりました」
「岩尾さんに近づくな」
教室に戻るなり絡まれた。
そういえば、前にもこいつに絡まれたな。名前なんだったか。
「おい、聞いてんのか」
確か斉藤だったはず。
「なんでお前の命令を聞かなきゃならん。何様のつもりだ?」
「知ってんだよ。お前が昔何をしたのか」
「なんの話だ?」
「聞いたぞ。お前中学の時に女子を襲って停学になったことがあるんだろ。そんな危険な奴近づけさせるか!」
「おいちょっと待て、本当になんの話だ?」
「とぼけるな!」
斉藤が大きな声でそんなことを叫んだため教室は静まり返り廊下にいた者たちまでもこちらに注目していた。
「本当になんのことかわからないんだが」
「まだ言うか。聞いたんだよお前の中学の同級生っていうやつから」
中学の同級生でこんな嘘の噂を流す奴は1人しか思いつかない。
「そいつの言ってることは嘘だ。信憑性のない話はあんまり鵜呑みにするもんじゃないぞ」
「俺にとってはお前なんかより見ず知らずの人の方が信用できる」
「お前な…」
「黙れ強姦やろう」
興奮して人の話を聞く気配すらない。
「なんの騒ぎですか?」
教室の入り口にタイミングがいいのか悪いのか岩尾が立っていた。
「何を言い争ってるんですか?」
そんなことを言いつつ雪芽がこちらに近づいてきた。
「岩尾さん、そいつに近づいたらダメだ!」
斉藤が岩尾の手を掴み引き寄せ抱き寄せるような体制をとる。
「岩尾さんあいつは強姦野郎なんだ。だから近づかない方がいい。こんなに震えて今まで脅されて怖かったんだろう」
違う岩尾が震えているのは昔同級生の男子にいじめられていたせいで男子に触れられるだけでそうなるんだ。
ただ、それを言ってしまえば岩尾がかくしていたこともばれることになる。
こいつは聞く耳を持たない。その上岩尾の震えを勘違いしている。全部の誤解を解くのは面倒だし難しいだろう。
「ちょっと待った」
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