第10話人気者と教室の虫
教室の中はガランとしていた。
蜘蛛が荷物の中にはいるのを防ぐために机の横にかけていた荷物も廊下に出したのだろう。
そんなに怖がることか?
そんなことを考えていると視界の端を黒いものが横切った。
そっちに目をやると30センチほど離れたところに4、5センチほどの蜘蛛がいた。
「なんだよ。もう少しでかいと思ったんだがそんなことないじゃねえか」
飛羅廼がくそでかいとかいうから10センチくらいのやつを想定してたが拍子抜けした。
捕まえるために近づくと蜘蛛が飛び跳ねた。その先は俺のズボンだった。
特に躊躇うこともなくズボンに引っ付いた蜘蛛を素手で捕まえる。
そのまま外に逃したいのだがこのサイズを逃すのは躊躇われた。
「なんかいいもんねえかな」
教室を見渡すと教室の後ろ側に虫籠があった。その中に蜘蛛を入れ教室のドアを開ける。
「捕まえたから入れよ」
「断る」
ドアの前まで移動していた飛羅廼が言い放った。
「なんでだよ」
「俺たちが恐れていたのはあんな小物ではない」
蜘蛛の入った虫籠を指差す。
「おい!翔野後ろ」
他の男子生徒が指を刺し叫ぶ。
その方向に視線を向ける。
「おぉ、すご」
そのサイズに思わず笑いが出る。
教室後方の隅に蜘蛛がいた。そのサイズは10センチは優に超えていた。
この教室のどこで生活したらあんなデカさになるんだよ。
しかし久しぶりに蜘蛛の形をはっきり認識したな。
それにさっきからすげぇ目が合う。てかずっと目合ってんだけど。おもしろ。
どうするか捕まえようにもあの高さじゃ手が届かないし箒で叩き落とすか?いや、顔に落ちて来たら最悪だ。よし、投擲で行こう。
教室前方にある古紙専用のゴミ箱から適当に紙を持っていく。
紙を丸めて蜘蛛の目の前に投げる。目的の場所にあたったが蜘蛛は微動だにしなかった。
図太いなあいつ。次は当てるか。
次は、蜘蛛目掛けて投げる。見事に命中。床に落ちてきた。
床に落ちてきた蜘蛛はひっくり返り起き上がれなくなっていた。
今のうちに捕まえておくか。
そこら辺に落ちていたビニール袋に捕獲する。
捕まえたはいいがこいつらどうするか。
捕まえた蜘蛛の処分を考えていると教室のドアが勢いよく開けられた。
「大きい蜘蛛が出たってほんと!?」
教室に入ってきたのは白衣を着ている教師だった。
確か生物担当の
立花先生は俺に近づき興奮ぎみに訪ねた。
「蜘蛛はどこ?」
「これですが、」
「本当だ!大きい!この子たちもらっていい?」
カブトムシ見つけた子供かよ。でも、蜘蛛だぞ?
「別にいいですけど」
「ありがとう!君名前は?」
「翔野です」
「翔野くんいつか君には必ずお礼をするからね!それじゃ!」
立花先生は、嬉しそうに走って教室を出ていった。
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