第9話人気者のプライベート

「そういえば翔野さんは、一人暮らしでしたよね?」

 弁当を食べ終わりゆっくりしていると岩尾が問いかけてきた。

「そうだがそれがどうしたんだよ」

「先ほどのオムライスの作り方を教えてください」

 どんだけ気に入ったんだよ。

「教えるのはいいがそれと俺が一人暮らしかは関係あるのか?」

「ご家族の方がいるなら手見上げをと思いまして」

 わざわざ手土産の準備わしようなんて丁寧な奴だな。

 ちょっと待て何故料理を教えるだけで手土産を用意する必要がある?

「お前まさか俺の家に来るつもりか?」

「そのつもりですが何か不都合でも?部屋を片付けたいのなら外で待ちますが」

「俺はそういうことを言いたいんじゃない。お前俺に対する警戒心はないのかよ」

「翔野さんは変なことしない人だと思ってますよ?それにもし変なことをしたら殺します社会的に」

 岩尾は笑顔で言い放つ。

 なんでこいつこんな物騒なこと笑顔で言えるんだよ。

「お邪魔してもいいですか?」

 こいつ引くつもりがないな。

「わかった」

「ありがとうございます。では、放課後家まで案内してくださいね」

「へいへい。そういえばお前門限とかないのかよ」

「ありませんよ。私、一人暮らしですから」

「そうだったのか」

「話してませんでしたっけ?両親の転勤が決まったんですが将来のためにということで私だけここに残ったんです」

 そう語る岩尾の顔が暗くなっていた。

「お前、休日何してんだよ」

 突然の質問に岩尾は呆気に取られていた。

「きゅ休日でしたら本を読んだり勉強してます」

「つまらなそうな休日だな」

「失礼ですよ。そういう翔野さんは休日何してるんですか」

「俺は、本読んでゲームしてダラダラしてるな」

「私とほとんど変わりませんよね」

 岩尾がジト目で見てくる。

「そんなことよりだ。お前、一回家に帰ってから来るだろ?」

「学校からそのまま行きますよ?幸い明日は土曜日で休みですから」

「わかった。ただ材料無くて買いに行かなきゃならんかもしれんぞ」

 ある程度予定を立てて教室に戻ると何やら教室が騒がしかった。

 正確にいえば教室の前の廊下だ。

「どうしたんだ?」

 飛羅廼を見つけ事情を聞く。

「教室の中にでかい蜘蛛が出たんだよ」

「捕まえればいいじゃねぇか」

「無理だよ。本当にくそでかいんだから」

 女子はともかく男子まで全員廊下に逃げるほどとはどんだけでかいんだよ。

 少し強引にドアの前まで人を押し退け移動し教室の中に入る。

 荷物は全て飛羅廼に渡してある。

 俺が教室に入ると廊下がさらに騒がしくなった。

 さっさと捕まえてしまうか。

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