第3話人気者のお願い

 自分たちのクラスから空き教室に移動するとしばらく沈黙が流れた。

「で、話したいことって?」

「あの日の放課後みましたよね?」

「なんのことだ?知らん」

 誰だってリストカットの傷なんて見られたくないだろうここは見えすいた嘘でも知らないふりをしておくべきだろう。

「話はそれだけか?それだけなら俺は帰るぞ」

「ま、待ってください」

 雪芽が俺に聞こえるか聞こえないか程の微かな声で呼び止めてきた。

 その声を無視してドアに手をかけた時廊下から声が聞こえてきた。

「あの岩尾ていう子可愛いよね」

「でもなんか調子乗ってない?嫌いなんだけど」

 いくら可愛くともみんなに好かれるということはないのだろう。

「言いたいことまとまったら言ってくれ」

 襟足をガシガシと掻き近くにあった机に座るとスマホを取り出してTwiterを起動して適当に流し見を始める。

 そして数分が経った。

「あ、あの。私の手首の傷見ましたよね?」

「あぁ、見たというか見えたに近いな」

「そうですよね…」

 俺に問いかけた時から雪芽が前で組んでいた手が小刻みに震えていた。

「あ、あの…」

「故意ではないとはいえ秘密を見たんだお願いを一つ聞くよ」

「え?」

「ほら、早く。俺だって暇じゃない」

 俺は戸惑う雪芽を急かす。

「じゃあ、その事を誰にも言わないでください」

「却下。元々言うつもりもない」

「え、なんで?」

 俺の発言が信じられなっかたのか驚いた顔を雪芽はしていた。

「今決められないならいつでもいいから思いついたらLAINで教えてくれ」

「わかりました」

「それじゃ、俺はこれで」

 別れの言葉を雪芽に伝え教室を出ようとした時。

「ありがとうございます。他の人に言わないと言ってくれて」

 雪芽が泣きたくなるほど落ち着いた声でお礼を言ってきた。

 それに対して俺は何も言わずにその場を後にした。

 その日の夜雪芽から連絡があった。


『お願いの件なんですが私の話を聞いてくれませんか?』

『そんなことでいいのか?』

『はい、聞いてほしんです。誰かに。』

『それだったら周りにいる奴らにいえば?』

『話したら気を使われそうで』

『俺なら気を使わない冷たい奴だと言いたいのか?』

『そうじゃなくて』

『で、何を聞いてほしいんだ?』

『わたしの昔の話です』

『それ、俺に話していいのか?』

『誰かに話したい気分なんです』

『聞いていてあまり気分の良いものじゃないので断ってもらって構いません』

『お願いを聞くと言ったのはこっちだし聞くよ』

『ありがとうございます』

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