FILE:19-14 ―― アビス攻略戦 ファイナル①

「奴の再生の起点は恐らく脳。

 お前が脚を斬って体勢を崩したところを俺が蹴り倒す。

そこを象に踏ませるのはどうだ? 」

「それが現実的だろうな。言っておくが、アビスが死んだ瞬間に周囲のゾンビが集ってくる。最後まで気は抜くなよ」

「分かってる」

 ォォオオンッ!!

 象は牙を振り回して応戦しているが、さすがにアビスの身のこなしが軽く当たらない。

「行くぞ左門」

「指図するな」

 左門がアビスの間合いに入った。アビスは象ではなく左門に向き直る。ストレートの拳が左門の右頬を掠めるが、ものともせずに彼女はアビスの左膝めがけてはすに斬り下ろす。

 刃が太腿から膝にかけてを切断するやいなや、鷹邑がアビスの鳩尾へ突くような蹴りを浴びせる。

 アビスは大きく後ろへ体勢を崩し、残った右膝だけで倒れるのをこらえた。追撃するように左門が右膝も斬り捨て、アビスは無様に倒れる。

 その頭へ象がストンプを一撃。アビスは両腕で象の脚を受け止め、その力は拮抗した。

 しかし、拮抗はすぐに解かれた。

 

 無惨にも象は倒れ去り、大量の血がアスファルトを染める。

「ゃ゙ッ゙た。アたっだ」

 アスレチックの肩に乗ったイケモチは、遠くから楽しそうに肩を震わせていた。彼は、B分隊と戦うことをせず、アビスと合流することを選択したのだ。

「あト゚一発。だレ゙にぁてようカナ」

 イケモチはアスレチックに背負わせた弾薬ケースから最後の一発を装填。肩にランチャーを構える。

 アビスは象から離れると、両脚を再生して左門と鷹邑に向いた。

「ここまでか」

「お前が先に諦めんのかよ」

「いや、まだ。案外奇跡は起きるものだぞ」

「へいへい……」


「では一応、我々は奇跡ということでよろしいでしょうか? 」


 鷹邑は、さっきから連続する救援に、いよいよ運命を感じ始めた。

きみちゃん! 」

「何ですかその呼び方は……しかしお元気そうで何より。ジーニアスとアスレチックを追って来ましたが、随分大きな特典が付いていますねぇ」

「早く解決してくれよ専門家! 」

「全てとはいきませんが、お任せください」

 周囲のゾンビが、どこからともなく撃たれた弾丸で、次々に倒れていく。狙撃のようだ。

「優秀なスナイパーもついています。皆で頑張りましょう」

「……おう! 」

「どうやら形成は五分に戻ったようだ」

「もう言い訳はできませんよ。チンピラさん」

「ほざけ。戦いが終わったら殺すぞ」

「今際の際でよく回る舌ですねぇ」

 こちらを狙っていたイケモチは、もう一人の隊員、新沼による銃撃を回避するために、一時的にアスレチックの背後に隠れた。

「では、鷹邑さんとチンピラさんはアビスの足止めを。我々はあのジーニアスとアスレチックを仕留めてロケットランチャーを奪取します。それでアビスを吹き飛ばしてしまいましょう」

「了解したぜ」

「今だけ聞いてやる―― ! 」





 不意を突いて体当たりを敢行したアビスに対し、鷹邑と左門、一気呵成の連撃―― 次回へ続く。

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