FILE:8 ―― これからの話をしよう
FILE:8-1 ―― これからの話をしよう①
組事務所オフィスにて。
生存者を連れて組事務所へ戻ったシャビ一行は、その生存者たちとともに、情報整理も兼ね、日本の現状について合議することにした。
「えー、おほんおほん、うふんうふん」
ホワイトボードの前に、指示棒を持ったシャビが立つ。
先の体育館戦の生存者以外は全員出払っているため、参加するメンツは変わらない。面々は、デスクの椅子を勝手に使ったり、ホワイトボードの前の床に座ったりした。
「じゃ、始めるぞ。俺がファシリテーターだ」
「偉そうにしないでね」霧雨が野次る。
「任せろ。じゃあまず日本社会の現状をまとめる」
小さな拍手。
「知ってのとおりこの国は、ゾンビの出現によって壊滅状態だ。壊滅状態なのは、先進国でいえば日本だけ」
「なんで日本だけなんですか? 」飯島が質問する。
「良い質問だ。ゾンビが出てきたとき、殆どの国は武力や核を行使した。アメリカに関しては国民全員が銃を持ってるから、それで自衛ができたのさ。それに比べ、日本では全ての対応が後手に回った」
「なるほど……」
「結果、推定五千万体のゾンビによって警察と自衛隊はてんやわんや。治安維持能力も失って今に至る」
そこへ霧雨が補足する。
「そのおかげで過激派とか、それこそ私たちみたいなヤクザがかなり動きやすくなった。ま、そのせいで不法移民も大量に流れ込んできてるけどね。
海上保安も機能してないから、密航だろうが密漁だろうが不法入国だろうが、やりたい放題ってわけ」
荷稲が訊く。
「隣国の連中が恐ろしくなりますな? 」
「そうよ。チャイニーズマフィア、北朝鮮スパイ、ロシアの諜報部隊……日本人の犯罪者より外人の犯罪者を数えたほうが早いわね」
シャビが指示棒でホワイトボードを叩いて言う。別に、何も書かれてはいない。
「ただ、うん千万のゾンビがいるってことは、他所の奴らにとってもそんだけの敵がいるってことだ。
この流れで、次にゾンビの種類について説明する」
「普通のゾンビ以外にもいるんですか? 」
金属バットを拭いていた柄木が首をかしげた。
「いる。数が多いってことは、突然変異体が生まれる確率も上がるってことだからな。
ゾンビにはざっくり分けて四種類。
ノーマル・アスレチック・ジーニアス・アビスだ」
フロアの片隅で、アドニスを撫でていた鷹邑が言う。
「アスレチックかなんだか知らんけども、べらぼうにデカい奴とは戦ったことがあるな」
「それが多分アスレチックだ。アスリートみたいなフィジカルギフテッドがゾンビに噛まれたりしてゾンビ化したら、その身体能力を維持したままゾンビになるケースがある。
ジーニアスはその知性バージョン。天才がゾンビになりゃ、天才のゾンビが生まれることがある。
このジーニアスは特にタチが悪い。群れを作るし、放火するし、武器も使えば人に紛れることさえある。風の噂じゃ、言語を理解してコンピュータまで使うらしい」
「人間じゃねえか」鷹邑は目を覆う。
「元、な」シャビが肩をすくめてみせた。
「じゃあ、アビスって? 」
―― 次回へ続く。
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