FILE:7 ―― 悪辣襲来共同戦線

FILE:7-1 ―― 作戦準備

――馳芝は、一同を集めて作戦を発表する。

「敵の数からして、正面突破は不可能です。なので集団で固まり、背後をとられないように壁に沿って移動しつつ、非常口から外へ出ます」

 体育館の周囲には一定の間隔で、外や、校舎と接続する廊下に繋がるドアがある。その内の一つであるドアに、非常口を示すピクトグラムが点灯していた。ドアの位置は、生存者が固まる隅からほぼ真反対。

「近接武器と射撃武器を持った方で二人一組に。防具を着けられる方は装着を」

「はい! 」

 金属バットを持った柄木や、木刀を持ち剣道着をまとった男が勇んで声をあげた。

「脱出後はどのように? 」老爺が訊ねる。

「二人の乗ってきたバンと、私のパトカーで全員を乗せるつもりです」

「乗るのか? 」シャビが首を傾げる。

「乗せるしかない」馳芝が答える。

 ガラスを叩く音やドアを叩く音はさらに増幅する。その中には、一際ひときわ大きな衝撃音も混じっている。恐らく強力な個体も混じっているのだろう。

「戦闘が始まる前に、名前をお伺いしたい」

 馳芝は老爺に聞いた。

荷稲かいな 秋草しゅうそうと申します」

「荷稲さん。拳銃隊と共に前衛をお願いしても? 」

「喜んで」

 白い髭を撫でつける荷稲は、頭も禿げていて背も低い。このいわゆるタダの老人が本当に戦えるのか、一見すれば疑問でしかない。

 それはさておき。

 配置としては、四人いる子どもを一番壁側、集団の中央に寄せ、馳芝、荷稲、霧雨、シャビの四人は、仲間に流れ弾が当たらないように前衛を務める。

 前衛には護衛が付く。

 馳芝には剣道経験者の縦木たてぎ まさる

 荷稲には薙刀経験者の一延いちのべ 瑠希るき

 霧雨は「一人で大丈夫」と言って護衛を断り、シャビには金色の金属バットを持った柄木が護衛として付いた。

 前衛は計七名。

 これに加え。

 矢筒が無かったため、荷稲に矢を渡す役目を母親の一人が担う。

 前衛と子どもたちの間には三名の男女と飯島が入り、各々が四方向に視点を分け、状況報告や判断、子の防衛を行う。各々は護身用に、ナイフや薙刀、竹刀を持った。

 これにて生存者全十六名総員配置完了。

 この配置は、馳芝の指示によって一分足らずで完了した。もしこの陣形を組むことなく非常口に走りでもすれば、猿が降ってきたと同時に各個撃破で全滅を免れなかった。

 ガラスが叩かれる音が止み。

 ある者は唾を、ある者は息を飲み込んだ。

「お出ましだぜ」





―― 次回へ続く。

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