荷運び

グラーフはバツが悪いのを誤魔化すようにしゃがんで、片方のトランクの蓋を開けた。

グラーフ「これが俺が作った人形だよ」

トランクの中には、クマやウサギといった動物をかたどった可愛らしいぬいぐるみがいくつか並んでいた。

タニア「わあ、かわいい!」

タリア「ほんと、可愛い!」

ふたりはグラーフが作ったぬいぐるみを見て目を輝かせた。


グラーフ「気に入ってもらえたかな? よかったら、売ってあげるよ?」

タリア「え…でも高いんじゃ…」

ぬいぐるみは結構しっかりした作りをしている。

グラーフ「でもこれは子供や女の子向けだからね。そんなに高くない値段にしてあるつもりだよ」

タニア「わーい!タリア、買って?」

タリア「自分で買いなさいよ!…すみません、グラーフ様。後で考えさせていただきますね。とりあえず、荷物をお運びいたします」


グラーフはトランクの蓋を閉じた。

グラーフが1週間分の宿代を前払いすると、タリアとタニアはトランクをひとつずつ持って、グラーフを2階へ案内した。


・・・


タニア「えっと…空いてる部屋はここね」

タニアは2階の宿泊用の部屋のひとつにグラーフを通した。


グラーフ「他の部屋は空いてないんですか?」

タリア「はい、今は出かけてますけど、ここを拠点にしている冒険者の方がいらっしゃって」

グラーフ「なるほど」


グラーフは部屋の中を見回した。

グラーフ「なかなか良い部屋です…ね?!」

言いながら、目は窓を見て止まった。窓には鉄格子が嵌められている。

グラーフ「ははは…。これは、客が夜逃げしないようにってことですかね?」

タリア「いいえ、違いますよ!宿代は前払いでいただいていますし! 単なる防犯用だそうです」

グラーフ「そ、そうですか。そうですよね。ははははは…」


タニア・タリア「それでは、どうぞごゆっくり~」「それでは、どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」

グラーフを部屋に残し、タニアとタリアは退出した。

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