どっちが姉?(エピソード主役:タリア)

そこに、2階の掃除を終えたタリアが降りてきた。

タリア「あんた、またさぼってるんじゃないでしょうね?」

タリアはタニアがいつも座っているテーブル席に向かって声をかけた。が、そこには誰も居ない。

そしてカウンターの近くに知らない男の人が立っていることに気付く。


タリアは驚いて目が大きく広がり、口をあんぐりと開けてしまった。

見知らぬ客の来訪は滅多にないのに、先日のオーメム様に続いてこんな短時間に新しいお客様が来るとは。


タニアはカウンターの内側からタリアに反論した。

タニア「失礼ね。ちゃんと仕事をしてたのよ。こちら、宿泊のお客さんよ」

タニアがグラーフを指すと、グラーフはタリアに向かって微笑みかけた。

グラーフ「初めまして。人形遣いのグラーフと申します」


タリア「あ」

タリアは慌てて表情を戻して頭を下げた。

タリア「い、いらっしゃいませ?!」


それを見てグラーフは笑った。

グラーフ「ははは! 反応がこちらのお嬢さんと全く同じですね。顔もそっくりですし、もしかして双子でしょうか?」

タリア「え…この子と同じ反応でしたか?…お恥ずかしいところをお見せして申し訳ありません。そうです、わたしたちは双子なんです」

タニア「そうなんですよーフホンイだけど」

タリア「不本意って、あんた…」

タニア「だってホントのコトだもーん」

タリア「お客様の前でそういう事を言わないの!」

タニア「でもホントのコトなんだもーん」

タリア「もう!」


2人が口喧嘩を始めたので、グラーフは反応に困った。笑顔が固まる。

グラーフ「えーっと…」

そこにライラが口をはさむ。

ライラ「うふふ~。喧嘩するほど仲がいいんですよ~」

グラーフ「はぁ、そうですか…」


ライラ「ほら~タニアちゃんタリアちゃん~。じゃれ合うのはそれくらいにして~、お客様をお部屋にご案内してね~?」

タリア「あ、すみません!荷物をお運びしますね」

タリアはライラに言われて、グラーフの足元に置かれている2つのトランクに目をやった。かなり大きなトランクだ。こんな大荷物を持って旅行するのは大変だろう。

タリア「ずいぶんと大きな荷物ですね」

グラーフ「そうですね。でも大切な商売道具が入ってるので」

タリア「何をされてるんでしたっけ?」

グラーフ「人形を扱う仕事ですね。人形を作り、売っています。人形劇をやったりもしますよ」

タニア「そういえば人形遣いって言ってたわね…言ってましたね」

タリアに睨まれて、言葉を丁寧に言い直すタニア。


グラーフ「ははは。お姉さんは妹の教育もしないといけないのか。大変だね」

グラーフは2人の様子を見て笑い、タリアに話しかけた。しかしその発言はタニアに刺さった。

タリア「えっと…」

タニア「ちがいますぅ!あたしがお姉さんで、そっちが妹なんですぅ!」

グラーフ「え?そうなのかい?」

タリア「はい、一応…」

グラーフ「そ、それは失礼しました」

グラーフは慌てて2人に謝った。

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