退屈・5(エピソードゲスト:宿泊客)
タニア「あー、タイクツ……」
今日も今日とてタニアは酒場のテーブルに突っ伏していた。
タニア「おねえちゃん、早く帰ってこないかな…」
そのとき、店の扉が、ガチャリと大きな音を立てて開いた。
タニアはハッと顔を上げる。
おねえちゃんが帰ってきた?!…ううん、どうせまた友だちが遊びに来たんだろうけど。
しかし扉から入ってきたのは、全く見知らぬオラク人の男性だった。
両手にひとつずつ大きなトランクを持ち、背中には背負い袋を背負っている。
甘いはちみつ亭は宿酒場である。宿屋と酒場を兼ねている店だ。どちらも、理論的には見知らぬ客が来てもおかしくない店だ。
しかし甘いはちみつ亭があるのは、『普通の国スタンガルド』の中でも辺境にあるハルワルド村なのだ。見知らぬ客が来ることなど、滅多に無い。
普段来るのは村人だけ。それと
それなのに、全く知らない人?!
いや、最近来たオーメムは見知らぬ客だった。
でも、最初にミシアが応対したので、タニアとしては何もする必要は無かった。
しかし今はミシアは(タリアも)いない。自分が応対しなくてはならないのだ。
タニアは驚いて狼狽した。
自分の目が大きく広がり口があんぐりと開いていることにも気付かない。
とりあえず立ち上がり、表情を戻しつつ
タニア「い、いらっしゃいませ?!」
と(多少裏声であっても)挨拶できたのは上出来であろう。
建物の中に入ってきたオラク人の男性は、タニアの方を向いてにっこり微笑んだ。
男性「はい、よろしくお願いします。こちらは宿屋と伺ったんですが…?」
タニア「や、ヤドヤ…?えーっと、ヤドヤってなんだっけ…? ここは村の人たちがお酒を飲むところで~」
タニアはおろおろして、考えがまとまらない。
ライラ「いらっしゃいませ~。タニアちゃん~、甘いはちみつ亭は宿屋でもありますよ~?」
ライラがフロアの一角にある厨房から男性とタニアに声をかけた。
タニア「あっ、はい、そうです!宿屋です!」
男性「ははは、そんなに緊張しなくても。とりあえず1週間ほど滞在したいのですが、お願いできますか?」
タニア「は、はい、えーっと…?!」
タニアはきょろきょろと左右に頭を動かした。ライラが目に留まる。ライラは微笑みながら頷いだ。
タニア「は、はい、大丈夫!です…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます