退屈・4(エピソードゲスト:サティ)
タニアはティックとの話が終わっていないのにテーブルに突っ伏した。そしてわざとらしく声を出す。
タニア「あー、タイクツ……」
ティック「おいおい、人と話してるときに、なんて奴だ…」
しかしタニアがテーブルに突っ伏したのは、顔を見られたくないからだった。
さっき何気なくティックから(タリアと一緒くたではあるが)「可愛い」と言われて、思いがけず嬉しくなってしまい、そして急に恥ずかしくなったのだ。
タニアは自分でも顔が真っ赤になっているのが分かった。
で、でも、別に、ティックのことなんか何とも思ってないんだけどね!
実際、自分がティックと結婚したいわけではなかったが、タリアがまた自分に無い幸せを増やすことが、ちょっと引っかかったのだった…。
そんな2人に声をかける者がいた。
サティ「昼間っから、お盛んなことですわね」
いつの間にかサティが来ていたのだ。
サティは村長の家の長女で、年齢はタニアの2つ上。「ハルワルド村で2番目」と自称している大きな胸が自慢だ。
ティック「お、お前は何を言ってるんだ?! そんなんじゃねーし!」
狼狽するティックに対し、タニアは意味が分からなくてきょとんとした。
タニア「“おさかん”って何?」
サティ「分からないなら、もっとお勉強することですわね」
サティはタニアのテーブルに広げられている勉強用のノートをとんとんと指で叩く。
タニア「ぶぅ」
タニアは不満そうに頬を膨らませた。
タニア「それにしても、今日は来客が多いわね。おねえちゃんならいないわよ?」
サティ「誰があんな貧民に会いに来るものですか。貴女方じゃあるまいし」
サティの言う『貧民』とは、ミシアのことだ。サティは「女性の魅力は胸の大きさ」と半ば公言していて、胸がほとんど無いミシアのことを貧民と呼ぶことがあった。
ティック「どうせライラさんが目当てだろう…」
サティ「ど、どうして分かったのです?!」
タニア「分からない方がどうかしてるわよ」
タニアとティックは溜息をついた。
サティは「甘いはちみつ亭のライラ様がハルワルド村で一番の美人(すわなち一番胸が大きい)」と認めており、サティがライラを崇拝しているとさえ言えるほどの熱の入れ様なのは、村中が知っている周知の事実であった。
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