退屈・3(エピソードゲスト:ティック)
タニア「あー、タイクツ……」
今日もタニアは酒場のテーブルに突っ伏していた。
タニア「おねえちゃん、早く帰ってこないかなー…」
そのとき、店の扉が、ガチャリと大きな音を立てて開いた。
タニアはハッと顔を上げる。
もしかして、おねえちゃんが帰ってきた?!
しかし扉を開けて入ってきたのは、ティックだった。
ティックはハルワルド村の医士パブリと看護士クスタの息子で、親の跡を継ぐ予定の医士見習い。ミシアやタニア・タリアの幼馴染である。
タニア「なんだ、ティックかぁ」
タニアはあからさまにがっかりした声を出した。
ティック「なんだとはご挨拶だな」
ティックは苦笑しながらタニアの方に歩いてくる。
ティック「ようタニア、相変わらずだな」
タニア「よけいなおせわよ。いったい何の用?おねえちゃんならまだ帰ってないわよ」
ティック「別にミシアに会いに来たわけじゃねえよ。お前らじゃあるまいし」
ティックは呆れたように答える。
タニア「じゃあタリア?」
ティック「ば、ばか!そんなんじゃねえし!」
ティックは今度は明らかに動揺した様子で答えた。
タニア「ふぅーん…?」
タニアはジト目でティックを眺めた。
心の中で考える。
ティックは
成人になったばかりの自分にはあまり関係ないと思っていたけど、成人の次に来るのは結婚だ。
結婚なんて、幼い頃は憧れや恥じらいで考えていたけれど、ティックの年齢ならそろそろ現実的な問題として考えていてもおかしくはない。
その相手としてタリアのことを考えてるっていうの?
タニア「
ティック「どの口が言うんだ…すぐ仕事をさぼるのはお前だろ。性格が悪いと感じるのは、お前が何かにつけてタリアに突っかかるからだろうし」
タニア「なによ、ずいぶん肩を持つのね。あんなブスが好きだなんて、ティックも趣味が悪いわ」
ティック「おいおい、双子がブスって言ったら、自分もブスってことになるじゃねえか」
タニア「ほんとだわ!?」
タニアは目を大きく見開いて、ティックの方を向いた。
ティックはタニアのくりっとした可愛らしい目に見つめられてドキッとし、思わず呟いた。
ティック「お前らは充分可愛いよ…」
タニア「え?」
ティックは我に返って、慌てて弁明する。
ティック「な、何でもねーよ!つーか、好きだなんて一言も言ってねーからな、俺は?!」
タニア「あら、そう? まぁ、どうでもいいわ」
タニアはそう言って、再びテーブルに突っ伏した。
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