退屈・2(エピソードゲスト:ライラ)
タニア「あー、タイクツ……」
今日もタニアは酒場のテーブルに突っ伏していた。
頭の近くには課題が書かれたノート(タリアが用意した物)が一応置かれているものの、やはり進捗状況は芳しくない。
ライラ「うふふ~。そうしていると、ミシアちゃんそっくりね~。昔のミシアちゃんを思い出すわ~」
ライラがお茶を持ってきて、タニアのテーブルの上に置いた。
タニア「あっ!」
タニアはがばっと身体を起こした。
店の仕事を減らして勉強時間に充てる。それは
タニア「ありがとう、ライラさん」
タニアはバツの悪さを誤魔化すように、ライラが淹れてくれたお茶を一口すすった。
ライラは甘いはちみつ亭の料理人であると同時に、ミシアやタニア・タリアを育ててくれた親代わりでもある。
タリアへはつい悪態をついてしまうものの、ライラへはきちんと接するタニアであった。(実際のところ、態度が悪い相手はタリアのみである)
タニア「ふう。美味しい」
ライラ「それは良かったわ~」
タニア「…えーっと…。あたしとおねえちゃんがそっくりって、どういうこと?」
タニアは首をかしげた。
タニアがひとりで誘拐されたままだった期間、誘拐犯たちが使っていた鳥型魔法具が見る景色を、水晶球を通してタニアはずっと見させられていた。
鳥型魔法具が監視していたのは、甘いはちみつ亭。しかしこの鳥は店の中に入ることは出来なかったので、建物の中で何が起きていたかについては、タニアはほとんど知らなかった。
ライラ「冒険者になる前の、ミシアちゃんはね~。そうやって、テーブルに倒れ込みながら~、お客さんが来るのを待ってたのよ~?」
タニア「へぇ、そうなんだ」
とある冒険者に誘拐から救出されたミシアは、冒険者に憧れるようになっていた。
いつかハルワルド村にも冒険者が来て欲しい。ボクも仲間に入れて欲しい。それでボクも人助けをするんだ。それがミシアの夢だった。
そしてあのとき、
ライラ「そのときの、憧れていたものがついに目の前に現れたときの、ミシアちゃんの輝くような笑顔といったら~、もう、眩しくてね~」
ライラはミシアが冒険者になったきっかけの話をタニアに語って聞かせた。
タニア「へえ~、そうなんだ!良かったね、おねえちゃん…!あぁ、あたしもそのときのおねえちゃんの顔、見たかったなぁ!」
タニアは両手を胸の前で握りしめて、うっとりと顔を宙に向けた。
タニア「…あー、おねえちゃんのことを考えてたら、なんだかイライラしてきちゃった…。おねえちゃん成分がたりないよう…!」
タニアは身悶えし始めた。
ライラ「あらあら~。今はこれで我慢してね~」
そんなタニアを、ライラが優しく抱きしめる。
タニア「…ん…。おねえちゃんじゃないけど…これはこれでいいかも」
ライラ「どう~? 落ち着いたかしら~?」
タニア「ぅん…」
ライラは身体をタニアから離した。
タニア「…よくなった気がしたけど、やっぱりまだダメェ!」
タニアは再びライラに抱き付いた。
ライラ「あらあら~。成人したっていうのに、まだまだ甘えん坊さんね~?」
イライラする→抱きしめる→一時的に改善する→離れる(→最初に戻る)というサイクルを何回か繰り返した後で、ようやくループは終わった。
・・・
ライラ「私も仕事に戻るから~、タニアちゃんも、お勉強頑張ってね~?」
タニア「…はーい」
少しだけやる気が出たタニアは、仕方ないとばかりに課題に向き合った。
数分だけは、集中できた。
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