第10話:時空魔法

said:シオン

 その時ミュリナが使った魔法は二種だった。時空防御魔法『ジサント・シード』時空攻撃魔法『ヴォースト・ムーサ』の二種類だ。イメージで言うと、『ジサント・シード』は、からだの回りに薄い別空間を作り触れるものを別の空間へ葬り去る魔法。『ヴォースト・ムーサ』は、空間を剣の形に生成し相手切りつける魔法だ。

 なぜこれらが半物質魔法と呼ばれるかと言うと、水魔法や風魔法は一から十まで魔法で生成されたものなのに比べ、時空魔法はもともとそこにあるものに対して入り口を作り、その中のものを活用しているから、全てが魔力で生成されているものではないからだと言う。ちなみに、『ジサント・シード』の耐久力についてだがミュリナ曰く、

「恐らくこのモンスターの攻撃ならかすり傷程度に押さえられるんじゃないかな?」

 とのことだった。念のためと、『ジサント・シード』を僕に付与した後、ミュリナはグリフォンの回りに隙間なく『ヴォースト・ムーサ』で生成した剣を敷き詰めた。そして、

「もうこれ以上時間を止め続けるとシオン君へのデメリットが軽傷じゃ済まなくなるから帰るね。」

 と言って、何処かに消えた。その瞬間、グリフォンが甲高い悲鳴を音が聞こえた。何が起きたのかよく分かっていないようでキョロキョロとしばらく首を動かしていたが、しばらくすると動かなくなった。

 おそらく倒したと言うことでいいんだろうか。・・・なんとか生き残ることが出来た。

 そんな感慨に浸っていると後ろから茂みをかき分ける音がした、

「シオン君何があったの?あんな大きな魔法、空に打ち上げて、、、って何これ?何でこんなところに『スピア・グリフォン』がいるの?」

 ちょうど何もかもが終わった現場に来たのはアヤだった。

「『スピア・グリフォン』って言う名前なんだ?これ。」

「何でそんなに冷静なのかな?そもそもこんなところに、こんな強いモンスターが出てきたのかが不明だよ。おまけに2体も!もしかしてとは思うけど、お父さんがこんな風になってるって事は・・・。」

 ある程度自分で状況を把握したらしい。アヤは僕をじっと見る。でもあいにく説明してる余裕はあまりないようで、立っていることすら辛い。

「ちょっと事情があるんだけどね。後で話すよ。アヤ、後の事は頼んでいいかな?」

 その時のアヤの驚いたか顔を僕はおそらく一生忘れないだろう。地面に向かって支えなく倒れようとする僕を受け止めながらも、

「・・・ちょっとシオンくん!?説明してくれないと分かんなよーーー!!」

 と言うアヤの叫び声が聞こえたが、心労によるものなのか、それともミュリナの言っていた副作用によるものなのか分からないが、僕はそこで意識を手放した。

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