第8話:魔物との対峙

side:シオン

 『起きたら飯を食べてからでいいからここから西にある森に来ること。』

 メモに書いてあった内容は、簡潔にまとめられたその文字と、西の森への行き方を書いた地図(雑すぎてどこを示していて、目印がどうなのか全然分からない)だった。

 その隣には僕の剣(木刀ではなく黒炎石で作られた剣)と杖が置いてあった。どうやらこれを持って森に来いということらしい。考えてみると魔物での実践練習は今回が初めてで、剣と杖を使うのも初めてだ。しかし・・・。

「飯食べてからでいいから。って言われてもなぁー。」

 スリクさん何も作ってくれていないし・・・。これはなんだ?あれか?僕に作れということなのかな?

 まぁ、幸い作れないわけではないから別にいいのだがここの食材を全部知っているわけではないし、でもガスコンロやI○見たいな物は無いわけだからスリクさんみたいに木材で火を起こすか、アヤのように火を起こす魔法を唱えるしかないのだが・・・。

「今までが戦いの練習しかしてないから加減ができないかもしれないんだよなー。」

 家に帰ってきたらそこが焼け野原でした。なんてことスリクさんに話したらどんなことをされるか分かったものではない。いや、その前に寝ているアヤの身が危ないか。あれこれ思案した結果、出来ないことしないことにして、朝ごはんを抜いてスリクさんのあとを追うことにした。当然突然いなくなっていたらアヤも心配すると思うから、スリクさんのメモに付け足しておく。

『スリクさんのあとを追うので、地図の森に言ってきます。朝ごはんを食べてないので作っておいてくれたらありがたいです。』

 そう書いておいて、さすがに起きて早々にご飯を作ってもらうのは悪いと思って、二文目を塗りつぶして家をでた。

・・・・・

side:シオン

 家を出て南に約五キロを3分で移動した。最近剣術で使えるようになった身体強化を応用して、走る速度を上げているので移動がだいぶ楽だ。

 ・・・無論スリクさんにランニングをさせられたりする時は、一切そんな能力は使わないが。

 しばらく森の中をスリクさんを探すついでに森の中を探索していると、

「・・・え?」

 僕の1.5倍くらいの大きさがあるんじゃないかと思うほどの巨大蜂が出てきた。・・・いくらなんでもでかすぎやしないだろうか?スリクさんの言っていたとおりならば、

「この森はかわいらしい奴らしかいないから、別に怖いことなんて無いさ。」

 ・・・いやいやいやいや。あれのどこが可愛いんですかスリクさん?普通に化け物じゃないですか!なんて愚痴っている場合では当然無いわけで、おろおろしている僕の都合なんて当然知らないであろう巨大蜂は、特徴的であるお尻についている針をこちらに向けて突っ込んできた。まだ状況の理解できていない僕は、反射的にスリクさんのときと同じように切りかかった。

 意外にも、巨大蜂は僕の知っているような俊敏力が無かった用で、(もしくは、僕の動きがそれだけ早くなったのか)あっさりと攻撃があたりその命を終えたようだった。それと同時に、茂みの奥からスリクさんが拍手をしながら出てきた。

「お見事!さすがに良く動けてるな。」

「見ていたなら助けてくださいよ・・・。あれのどこが可愛いって言うんですか!こっちを見つけたとたんいきなり攻撃してきたじゃないですか。」

 少し強く抗議してみるもののスリクさんは、そんな大したことでもないだろとでも言うかのように肩を竦め、

「まぁ、そんなに言うなよ。別に攻撃さえかわすことができたら、ここの敵は言うほどでもないんだから。」

 ・・・まぁ確かにそう言われればそうなのかもしれない。とは言っても・・・。

「少し無計画過ぎるでしょう?」

「まぁ、お前なら大丈夫だと思って任していたんだからそう言うなって。」

「そう言って自分がめんどくさいだけなのでは?」

 そう突っ込んでみると、

「ご明察。」

 と、腑が悪そうな表情で笑みを浮かべた。ぼく達の会話はそこで途切れたスリクさんの後ろからあと追って聞きたかのように、スリクさんの来た道からあの巨大蜂が三匹ほどやってきた。

「手伝ってくださいね?」

 僕はスリクさんに釘を指して、持ってきていた水明石の杖を取り出した。

「まぁ、ぼちぼちな。」

 スリクさんもいい加減な返事をしながらも両手剣を背中から抜く。それを待っていてくれたのかどうなのかは知らないが、蜂達は猛スピードでこちらに向かって飛んできた。しかし何故かスリクさんの方には、僕を殺すついでとでも言うかのように一匹しか向かわない。やっぱり仲間を殺されたことを恨んでいるのだろうか?

「じゃあ、この一匹始末しておくからそっちよろしく。」

「簡単に言わないでくださいよ!」

 僕は悲鳴をあげつつも、左手で『バリス・マリノ』右に持っている杖に風属性呪文の『ヒュレブ・オセク』(無数のカマイタチを敵に向かって飛ばし敵を切り裂く。風の下級呪文)を宿し、蜂に向かって放った。・・・どうやらこの蜂達は、一度加速したら曲がることができないらしく、自分から僕の放った魔法に向かって突っ込んで来て絶命した、、、液体が飛び散って少しずつ気持ち悪いが、しかたないだろう。隣を見るとよっぽど手を抜いているのか、ボロボロになっている蜂に最後の一撃を放とうとした・・・が、吹き飛んだのはスリクさんだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る