第3話:街へ

side:シオン


 家を出発して、約一時間くらいたったころ、ようやく町についた。

 本来なら20分くらいで着くはずらしいのだが、アヤとスリクさんが、以下のようなやり取りをしていたため時間がかかった。

「もうお父さんいい加減にしてよ!!『目前の敵を焼き払う炎の矢となれブレイズ・アロー』」

「っちょ!!お前殺す気か!!上級魔法なんか使うんじゃねえよ。」

「うるさい!!こうでもしないとくたばらないでしょ!!」

 会話が異常だった。って言うか、目の前にひろがっている光景が異常だった。さっきまで綺麗に咲いていた花々は、灰と化し焼け野原となっている。

 このとき僕は、初めてこの世界の魔法に触れた。そして改めて理解した。ここが僕の知っている世界とは全く違うところであるということを。

 魔法を放って少し冷静になったのかアヤはぼくの引きつった顔を見て、やってしまったと思ったのか、蛇に睨まれた蛙になったかのように動かなくなった。それを気付いてか、気付かないでかスリクさんは、明るい声で

「すごいだろう。これが攻撃魔法ってやつだ。俺は使えないが、威力は絶大なんだ。・・・お前も使えるかどうかは分からないけどな。」

「そのかわりに、お父さんには剣術があるじゃない。この際だし見せてあげたら?」

「そうだな。説明するよりみた方が早いだろうからな。」

 さっきまでの険悪な不陰気はどこえやら。仲のいい雰囲気をかもし出す二人に呆れつつも、二人の流れに乗ることにした。

「まぁ、見せてもらえるなら・・・。」

 この世界で生きていくためには、どんなことであれ見て知識を取り入れておくに限るだろう。目を背けてはいけない。それがどんなに慣れていなくて、異常なことに見えたとしても。そんなぼくの考えなど知る由も無いスリクさんは、張り切った様子で、

「よし、アヤそこらへんに岩でも作ってくれるか。対象がないと威力が分からないだろう。」

「そうだね。じゃあこれでいいかな?」

「おう。上等だ。少し下がってろよ。」

 20メートルくらい向こうにアヤは、ぼくと同じくらいの大きさの岩を出現させた。スリクさんは、それを一瞥して軽く剣を振った・・・様に見えた。

「さすがだね、あれくらいの岩なら朝飯前ね。」

「あたりまえだ。伊達に帝級を名乗ってるわけじゃない。」

「・・・。」

 平然と会話している二人に、僕はかける言葉が無かった。だって軽く剣を振っただけで岩が粉々になるなんて。

「まぁこんなもんだ。明日から教えてやるから。」

「魔法は私が教えてあげるから。」

「う・・・うん。」

 正直同じ次元まで上がれる自身が無い。僕の内心を察してか、スリクさんは僕の肩をたたいて

「心配するな、俺とアヤが鍛えるんだそん所そこらの奴なんてどうってことなくなる。」

 といって笑った。しかし反対にアヤは、周りを見て何かに気付いたようで表情を曇らせている。

「お父さん・・・。」

「ん?何だ?」

「そういえばここって街中だったね。」

 周りを見ると、何で今まできずかなかったんだろうと思うくらい、町人達の注目を浴びていた。

「・・・。」

 しばらくの沈黙のうち、

「さぁ、とりあえず買い物するか。」

「そ、そうだね。いつまでもシオン君がこんな格好だとかわいそうだものね。」

 二人は何事も無かったかのように会話をしながら、その場を離れた。僕も周りの人達に頭を下げて、アヤ達の後についていった。

・・・

 一騒動起こした僕達は、その場を離れたあと、まず僕の服を買う。と言う事で、普通の衣服屋にはいった。と思ったのだが違った。

 ここに来るまでに、アヤがこの世界のお金の仕組みについて教えてくれていたが、(一般人の収入は、銀貨400枚で、金貨1枚に変えるためには、銀貨が千枚いる。付け足すと、この世界で一番価値が低いお金は、銅貨で銀貨1枚に換えるためには、銅貨200枚が必要となる。)このお店に売っている、服は全て値段が銀貨200枚を超えていた。(普通の服は、銅貨100枚で買えるらしい。)

「ちょっと、アヤここの服高くない?」

「大丈夫だよこれくらいの値段なら何の問題も無いよ。」

 聞き間違いだろうか?今、この服の値段を安いといったような気がする。反応に困っていると、アヤはさらに信じられないことを口にした。

「だって、私の月収が金貨3枚くらいで、お父さんはこの国のお城の兵士の人達に剣術を教えてあげてるから、国からのお給料で月に金貨5枚くらい貰ってるから。」

「・・・。」

 言葉も出ないまさかそこまでのお金持ちだったとは。確かにアヤ達の持ってる武器などは、宝石やらなにやらよくわからないものが付いていて、とても高そうに見える。アヤは黙っている僕に、続けて、

「だから別に気にしなくても大丈夫だよ。」

 と言って笑った。ちなみに、このあと二人は僕の服を上下それぞれ5着ずつ買ってくれ、店員さんに金貨2枚を払った。・・・当然店員さんは、とても驚いていた。

「さてと、服は買ったし、次は武器だね。」

 店員さんの驚く顔などどこ吹く風。アヤは涼しげな顔で代金を払いながら言った。

「そうだな、取り合えずシオンどこかで服を着替えてこいよ。」

スリクさんの言葉に続いてアヤも僕の体を指差し、

「そうだね、そろそろ魔法も切れる頃だろうし。」

 その言葉どうり、おそらく魔法が切れる予兆のようなものなのだろう。淡い緑色の光が僕の体を包んでいた。確かに大至急着替えなければいけないのだが、

「どこで着替えたらいいの?」

「それは私に任せて。・・・少し動かないでね。」

 アヤがそういった瞬間僕の目の前に、正確には僕の回り四方を囲うように土の壁ができた。

「着替えれたら言って。それ除けて上げるから。でも早く着替えないとすぐに壊れるように作ったから2分くらいで壊れるかもしれないから、早くしてね。」

「分かった。」

 そうは言ったものの、どれを着ていいのか少し迷ったため、本当に壁が壊れる直前まで時間がかかってしまった。

「危なかったね。」

 僕があせっていたのを見ておおよその事を悟ったのか、アヤは苦笑を浮かべていた。

・・・・

 そんなこんなで、僕の服も調達が完了したので、前の宣言どうり、僕達は武器を買いにいった。

 武器を買う時に一番気を付けなければいけないのは、四大属性と言う属性(火、水、風、土があるらしい)のうち、何が得意かと言うのを確認しておくこと。

 しかしこれは自分達が得意かどうかというのは選べず、何の妖精と契約しているかについてで決まる。(契約は、こちらからできるものではなく、生まれた時に一方的に妖精からしてくる。)

 しかしそれは妖精可視というものを身につけていなければ見えないらしく、アヤもスリクさんもこの能力は身につけていないのだとか。魔法能力の無いスリクさんはそもそも必要がなく、アヤも本当は学びたかったらしいが今は時間が無いのだとか。

 だが幸いにも、武器や装備品などを売っている人は、ある程度そちらの方面の技術は身につけているらしい。

「おや、スリクさん、アヤちゃん、いらっしゃい・・・。そっちの子は誰なんだい。」

 入って早々武器屋の店主だと思われるおばさんはそう言って、僕を一瞥した。スリクさんは、別になんでもないという風に

「ああ、シオンって言うんだ。今日からうちにすむことになったんだ。」

「そうかい。わたしはてっきりあんたが浮気でもしてできた子かと思ったよ。」

「んなわけねぇだろ!俺は今でもテレス一筋だよ。」

「ふぅん。そうかい。まぁいい。今日来たってことは、その子の 武器でも買いに来たのかね?」

「さすが。話さなくても分かってんじゃないか。」

「あんたらのはこの間つくろってやったばかりだからね。」

 何でもない。という表情でおばあさんは続けた。

「剣は、片手剣で黒炎石で杖は、・・・ん?」

「どうしたんだよ?ばあさん。」

 スリクさんの問いに、おばあさんは軽く首を振った。

「なんてことないさ。この子には、ウンディーネがついてくれているのは分かるんだけど。もう一人、見たことの無い子がいるんだよ。・・・まぁいずれ分かるから気にしなくてもいいさ。ウンディーネがついてるなら、杖は水明石を入れたモーリストの木でいいね。」

 あとから聞いた話だけど、水明石は水の威力を上げる効果があり、モーリストの木は、火の魔法から身を守ってくれる効果があるとか。

 こうして僕は剣と杖を手に入れた。ちなみに付け足すと、やっぱりここでもお金が飛ぶことになった。金貨5枚とか・・・高すぎだろう。

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