第4話 デニール【ASMR】/あの人の部屋に忍び込んで触ってもらいたいの

○純一の自室(深夜・秋)

   #純一、ベッドでひとりで寝ている。

   #裡沙、窓の外に現れる。

   SE 窓が開く音、鈴虫の鳴き声。


裡沙

「こんばんは。」


   #ウキウキした様子の裡沙、窓から部屋に入ってくる。

   #裡沙、主人公を起こさないようにしつつ、耳元で囁く。


裡沙

「窓の鍵、また開いてたよ。会ったときに、それとなく注意してるんだけどな……。」

「……もしかして、あたしのためにわざと開けてくれてる……?」

「……って、そんなわけないよね。」


「あたし、ちょっと自分に都合よく考えすぎだな……。」

「でも、そういうことしてくれるかもって、思っちゃうんだよ。」

「だって、あなたはとっても優しいから……。」


   #裡沙、はっと我に返ったように慌てる。


裡沙

「あ、あはは……あたしったら、一人でなに言ってるんだろ。」

「こういうことは、ちゃんと起きてるときに言わなきゃいけないのに……。」

「と、ところでね! 今日はお月様がとっても綺麗なんだよ。もうすぐお月見だもんね。」


「白くてまん丸で、なんだか可愛いんだ。」

「こんなこと言うと、お月様に怒られちゃうかもだけど。」

「……今度、あなたとお月見できたら嬉しいな。」


「一緒に公園のベンチに座って、温かいもの飲みながら、お月様を見上げるの。」

「学校の屋上とかもいいかもね。夜中でも、学校への入り方はちゃんと調べてあるから心配しないで。」

「あなたと二人っきりになれる場所、ちゃんと探しておくね。」


「あっ、最近はすっかり秋めいてきたから、寒くない場所のほうがいいかも?」

「ちゃんと温かい格好すれば大丈夫かな?」

「コートはまだ暑いかもだけど、タイツとか履いて……。」


「あなたも、秋といえばタイツの季節だって言ってたよね。」

「そのこと思い出して……今日は新しいタイツ、履いてきたんだ。」

「あなたが好きって言ってた、40デニールのタイツだよ。気に入ってくれるかな?」


「……触ってみる?」


   #裡沙、主人公の手を取り、自分の足に乗せる。


裡沙

「よいしょ……っと。わぁ……大好きな人の手のひらが、私の太ももに乗ってる……。」

「あなたが寝てるときじゃないと、こんな大胆なことできないよ。」

「お願いだから、今は起きないでね……?」


   #主人公、無意識に裡沙の太ももを撫で始める。


裡沙

「ひゃ!? えっ……!? まさか、あたしの太もも撫でてる……!?」

「も、もしかして、起きてるの……?」

「……ううん、ちゃんと寝てる……無意識に撫でてくれたってこと……?」


「えへへ……あたしの太もも、気に入ってくれたのかな。なんだか嬉しいな。」

「今だけは、好きなだけ撫でていいからね。」


   #主人公、寝たまま無意識に裡沙の太ももを撫で上げていく。


裡沙

「あれ……撫でる場所、どんどん上に登ってきてる……?」

「ふあっ……!? そ、そこは太ももじゃなくて……んっ……!」

「どうせなら、太ももだけじゃなくて頭も撫でてくれないかな……。」


「……今なら、手を頭に載せたら撫でてくれるかも……?」

「す、少しなら試してみても……いいよね……。」

「ごめんね……またちょっとだけ、手を使わせて?」


   #裡沙、頭の上に主人公の手を乗せるが、主人公の手は動かない。


裡沙

「あれ……全然撫でてくれなくなっちゃった……。」

「私の髪じゃ、撫で心地良くないのかな?」

「でも、頭も撫でてほしいなぁ……どうすればいいんだろ……。」


「そうだ! あなたはタイツの撫で心地が好きなんだよね?」

「だったら、頭からタイツを被れば、そのまま撫でてもらえるかもしれない……!」

「……けど、そんなことしたら、ただの不審者だよね……。」


「それに、いくら寝てるって言っても、タイツを被った姿は見せたくないし……。」


   #主人公、少し動く。

   SE ベッドの軋む音。


裡沙

「あれ……今、動いた気がする……。起きちゃった……?」


   #裡沙、主人公の顔を覗き込んで観察する。


裡沙

「う~ん……? ん~……。……良かった、ちゃんと眠ってるみたい。」

「でも、あなたの寝顔……本当に素敵だな。」

「独り占めできるのは、今ここにいるあたしだけ。」


「あなたも知らない、あたしだけの秘密……。」

「……そろそろ帰らないと……今日は少しはしゃぎすぎちゃったし。」

「あなたに撫でてもらえて、嬉しくなっちゃったせいかな。」


「……どうせなら、最後にもう少しだけ、大胆になってもいいよね……?」


   #裡沙、寝ている主人公の口にキスをする。


裡沙

「んっ……。」


   #裡沙、唇をそっと離す。


裡沙

「えへへ……あなたの唇、奪っちゃった。」

「次はそっちからしてほしいな。できたら、頭を撫でながら……。」

「あ、あはは……やっぱり今日のあたし、はしゃぎすぎだね。」


   #裡沙、再び窓から外に出ていく。


裡沙

「それじゃ、おやすみなさい。」


   SE 窓が開いて、閉じる音。



《最終話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.7 上崎裡沙編』(CV・門脇舞以)

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