第3話 タイフウ【ASMR】/びしょ濡れのままだけど…あの人の部屋に忍び込んでもいいよね

○純一の自室(深夜・夏)

   #外は台風が来ており、嵐が吹きすさんでいる。

   SE 窓が強風でガタガタいう音。雨の音。

   #純一、ベッドでひとりで寝ている。

   #裡沙、窓の外に現れる。

   SE 窓が開く音。


裡沙

「お、おじゃまします……。」


   #困った様子の裡沙、窓から部屋に入ってくる。

   #裡沙、主人公を起こさないようにしつつ小声で話す。


裡沙

「うぅ……どうしてこのタイミングで台風なんて……。」

「せっかくあなたに会いに来たのに……。」


   SE 窓がガタガタ鳴る音。


裡沙

「でも、こんな嵐の中でもぐっすり眠れるんだね……。」

「何事にも動じないあなたの姿、素敵だよ。」

「……あっ、いけない! 私、ずぶ濡れじゃない……!」


「ベッド、濡らさないようにしないと……!」


   #裡沙、ベッドを離れて床側に移動する。

   SE ベッドの軋む音。


裡沙

「ふぅ……とりあえずこれで大丈夫かな……。」

「はぁ~……全身、びしょびしょになっちゃった……。」

「雨合羽着てたのに、全然役に立たなかったよ……。」


「それどころか、透け透けだし素肌にぴったり張り付いちゃうし、もう最悪……。」


   #裡沙、身体に張り付いた雨合羽を引っ張って離す。

   SE 引っ張られた雨合羽がまた肌に張り付く音。


裡沙

「……けど、普通の服を着てこなくてよかったな。」

「もっとびしょびしょになっちゃうところだった。」

「雨合羽の下はね……水着なんだ。」


「最初はあなたの部屋に着いてから着替えようと思ったんだけど……。」

「思い切って、水着のまま歩いてきて大正解だったよ。」

「えへへ……あなたに喜んでもらいたくて買った、真っ赤なマイクロビキニ……。」


「少し露出が多いのは恥ずかしいけど、あなたなら喜んでくれると思ったんだ……。」

「でも、いきなり見せる勇気がなくて……こうして寝てるときに来ちゃった……。」

「今度、起きてるときにもちゃんと見せるからね。」


「そのときは、感想聞かせてね?」

「……そういえば、お店の店員さんったらひどいんだよ。」

「最初、小学生向けの水着を勧めてきたの。」


「そんなこと言われると思わなかったから、あたしショックで……。」


   #裡沙、ぐいっと主人公の顔に近づく。


裡沙

「ねぇ、あたしの身体ってそんなに子供っぽい……?」

「あなたはどう思う? ちゃんと見て、感想を聞かせてほしいな……。」

「あなたの意見なら、どんなことでも受け入れるから……。」


   #主人公、偶然寝返りを打って、顔が裡沙の顔に近づく。

   SE ベッドの軋む音。


裡沙

「ひゃっ!? もう……このタイミングで寝返り打つなんて……。」

「いきなり顔を近づけられたら、びっくりしちゃうよ……。」

「あっ、もう……お腹も出ちゃってる。夏こそ冷えが怖いんだから。」


「気をつけないと風邪ひいちゃうよ。ちゃんとタオルケットかけて――。」


   #裡沙、タオルケットを掛け直そうとして主人公のお腹を触ってしまう。

   SE 濡れた肌が振れる音。


裡沙

「わっ!? 濡れた手でお腹に触っちゃった……!」

「起こしちゃって……ないね。相変わらずぐっすり寝てる……。」

「あなたの動じなさ、逆に心配になってきちゃった……。」


「でも……ずぶ濡れのあたしが一緒にいると、あなたのことまた濡らしちゃうかも……。」

「もし、あたしのせいで風邪ひいたりしたら……。そんなのダメ……!」

「あたしがあなたを傷つけるなんて、絶対に許されないもの……!」


「……今日はもう帰るね。また今度、天気の良い日に来るからね。」

「そのときは、水着の感想聞かせて。」


   #裡沙、寝ている主人公を乗り越えてベッドの窓側に行く。

   SE ベッドの軋む音。

   #裡沙から滴った水滴が、主人公の顔に落ちる。

   SE 水滴が顔に落ちる音。


裡沙

「あっ!? ごめんなさい……また濡らしちゃった……!」

「……こんなんじゃ、今日はキスもお預けだね……。」

「それも、次に水着を見せに来たときまで取っておくよ……。」


「それじゃ、おやすみなさい……。」


   #裡沙、再び窓から外に出ていく。


裡沙

「うぅ……帰ったら、お風呂入らなきゃ……。」


   SE 窓が開いて、閉じる音。



《第4話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.7 上崎裡沙編』(CV・門脇舞以)

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