1.問題児と書いて人気者と読む!
二年目の新学期。
賑わう教室に、気怠そうな担任が入ってきた。
「皆、進級おめでとう。今からプリントを配るから、ちゃんと家の人にも見せるんだぞ」
やる気の感じられない担任は、進級に当たってのプリントを配布し終えると教壇に立つ。
「中学二年ってのは、色々慣れて
また受験の話かよ。それ、一年の終わりにも聞いたし。
教室のいたるところから不満の声が上がり、担任は苦笑を浮かべた。
「同じことを言いたかねぇけどな。一年はあっという間だ。散々楽しんで、来年受験地獄を乗り越えるのも良いし、今年しっかり学んで来年楽をするのも良い。それはお前達の自由だが、まぁ、悩んだら話くらい聞いてやるぞ」
「せんせー、
「自由の押し売り良くないぞー!」
「おっ! 難しい言葉知ってるな。偉いえらい。それじゃ、明日の実力テストも満点だな。期待してるぞ!」
適当な感じに笑う担任は、教室中から上がった不満の声に怯む様子もなく、席の一番後ろに集めるように言った。
俺の名は
教室を見渡すと、入り口近くの女子たちが視界に入った。顔を寄せ合って何かひそひそと話している。その片方、栗毛色のボブヘアの女子が、いわゆる、俺の幼馴染だ。
今年も、
こういうのを腐れ縁というのかもな。
幼馴染──
「とわ、今年もよろしくな」
「……お前とも一緒だったな」
「何だよ、その嫌そうな口ぶり。律花ちゃんばっか見てさ」
「男を見る趣味はないからな」
「うわっ、開き直ったよー。このストーカー野郎」
「誰がストーカーだ、誰が」
「毎日、律花ちゃんと登校して、一緒の塾に通って、帰宅も一緒!」
「そりゃま、家が隣だし。つうか、お前こそ俺の後をついてくるな」
「ひっでー。俺たち、親友だろ?」
「……ないわぁ」
冗談半分で話していると、担任が「常之原、
「お前ら、頼むから面倒ごと起こすなよ」
「先生、俺たちがいつ面倒起こしたんですか?」
「喧嘩とか
「いつも面倒ばっかりだろうが……」
「あっ! もうピザは頼みませーん!」
「あぁ、そう言うこと? もう教室でガスコンロは使いません」
「そしたらどうやってお湯沸かすんだよ! 俺、ラーメン食いてぇし!」
「ポット持って来ればよくね?」
「コンセントの使用も禁止だ! 弁当持ってこい!」
ふざけ合う俺たちに顔を引きつらせた担任は、この日初めて声を荒げた。
教室中から笑い声が上がった。
俺たちは何だかんだで意気が合う。
一年の時、昼休みに宅配ピザを頼んだとか、ガスコンロを持ち込んで鍋を始めたとか、拾った仔猫をロッカーで飼おうとしたとか、二人でちょいちょい問題を起こした。
当然、親が呼び出されたし、先生たちには問題児って思われてる。
喧嘩や虐めと比べれば可愛いもんだって、俺の親父はげらげら笑ってたけどな。ガスコンロを持ち込んだことは、母さんに
二度としないけどさ。ポットで湯を沸かすくらい良いんじゃねぇのて思う。冬は熱いラーメン食べたいじゃん。
個人面談の案内が書かれた紙を見ながら、俺は小さくため息をついた。
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