第8話 死の狭間で

なんだ?あの三人、俺が召喚したやつじゃなさそうだし、この世界の住民、はないか。

そもそもこの世界には誰もいなかったからな、となると、俺が召喚しただけで覚えてないのかもしれないし、話しかけてみるか。



擬態:狼ミミック:ウルフ!!


「ちょっと行ってくる!!」


そういって、俺は狼に擬態して、そのもののところまで駆け寄っていった。



瞬間、天地が逆になったように見えて、下腹部に違和感を覚えた。

数秒後、激痛電気が身体中を駆け巡り、下腹部の辺りからは血が噴き出している。



「なんだ、変な姿だ、強いのかと思ったけど、雑魚だったな」


真ん中にいる図体のでかいやつが、俺を目の前にしてそう言い放った。


「なんだっ、お、お前らは、、、、、」


俺は力なき声でそいつに聞いた。



「俺は元の世界にいた時、数々の犯罪を起こしてきた挙句、死刑になった。俺みたいな犯罪者でも、命は惜しいもんだ。生きたいと願ったその時、ここに飛んできたって訳だ。そんで、こいつら二人に会って、お前らを殺せば元の世界戻れるって話を聞いたから、こうしたわけよ。」



「元の世界っって、、そ、それは、、、地球か?」


「ああ、お前もそうなのか。」


「そうだ……。ゴブッ」



血が噴き出た。そういや俺、何で喋れてるんだろ、肉体が強化されてるからか?


でももう、これ以上は持たないと直感で分かった。直後、目の前が真っ暗になった。死んだんだと分かった。



俺は無責任だ。俺の街に勝手に召喚した挙句、召喚主は死んであいつらも殺される。俺はやっぱりどうしようもない人間なんだ。まあ、今は人間じゃないけど。



こっちの世界に来てからというもの、俺の心が明るくなっていたのが分かった。

この世界に来て、初めてちゃんと喋ってくれる友達のような存在にも出会えた。


俺はもう十分だ。じゃあ、さようなら。






・・・おまえは・・・死ぬな.......生きろ・・・・


俺は走馬灯を見ていた。


そう、これが俺が引きこもりになった理由だ。


俺が小6の時、家に強盗が押し寄せてきた。5人ほどはいただろうか。

そいつらは凶器を持って押し寄せてきた。

その時にいた父親が、身を犠牲にしてまで俺を守った。


その後、母親のいなかった俺は警察に引き取られ、保護施設に入った。保護施設の生活は地獄そのものだった。

食事は朝と夜だけ、勉強5時間、ゲームやテレビ禁止、9時に寝る。

これを少しでも破ったものはひどく叱られ、体罰を受ける始末だ。


そして義務教育が終わった俺は保護施設から出てきた。保護施設で知り合った仲間達と共に、笑い合いながら過ごしていた。


しかし、それは長く続かなかった。


数年後、仲間が失踪した。捜索願いをだすも、願いも虚しく、仲間は見つからなかった。

そして、それが俺が引きこもりになった理由でもあった。

みんなが俺を置いていく。そんな孤独感が、俺を責めていった。

———————————————————————————————————




その頃、街では奴らが暴れいていた。作った家なども崩壊し、住民が次々と殺されていく。


聖なる妖精ホーリーエルフと邪悪な妖精ダークエルフは、やつらの相手をしていた。




「なんなのこいつら、あいつは何してんのよあいつは〜〜」



「あいつってあの狼みたいなやつか?_そいつなら死んだ。」


「ふ〜ん、て、えぇ!!死ぬわけないでしょ、何いってんの?」


「いや、本当に死んだぞ。俺が殺した。」



「..........そう、死んだのね。あたし達でもあいつに勝つことができない。だから、何か奇跡を信じて持ちこたえるしかないね。」



そういうことで、聖なる妖精ホーリーエルフ邪悪な妖精ダークエルフは奴らの相手をしている。


しかし、徐々に押され、ダメージが蓄積されていく。核が弱点といっても、核が機能しているから死なないわけではない。このままだといずれは死ぬ。


それを理解しながら、あいつらは戦っている。なので無理はしていない。





___________________________________________

俺は不思議な感覚に陥っていた。心が温かく、体が優しいクッションに包まれているような感じだ。



そうだ・・・俺殺されたんだったな。まあ、こっちに来て少し長生きできたからいいか。



「死んでない・・・お前はまだ死んでないぞ・・・」



誰だ?俺の脳内に直接話しかけられているような感じがした。



「お前は普通の奴らとは違うから、そう簡単には死なない。でも、お前といえどこのままじゃ死ぬ。」



まだ俺は生きているのか・・・?



「瀕死だがな。今はお前が無意識に自分の血液を吸っていたから、なんとか生命を維持している。」



それがどうしたって言うんだ。



「つまりは、お前は死ぬか、生きるかの二択だ。」


でももう瀕死なんだろ?



「それは、狼の姿としてのお前だ。お前本体は、腕が一本削げたぐらいだ。その傷を治して、本体に戻れば生きることができる。」


十分重症じゃねぇか。で、どうやったら傷を治すことができるんだ?



「お前の吸血鬼ヴァンパイアの能力は再生能力も兼ね備えている。他の能力を併用して、それをうまく使うんだな。俺はこれ以上お前と喋ることはできない。頑張れよ。」



でも、自分の血を吸ったところで再生してない様子から見るに、もう諦めるしかないんじゃないか?


いや、可能性はある。できるか分からない、「賭け《ギャンブル》」だ。


俺の召喚した生物に俺の能力を付与できるならば、自分の体にもできるかもしれない。

細胞に能力を与えて意思を宿らせ、誰かの血を吸うことができたのなら?


ただ、細胞は消滅してしまったら?

まあ、そんなこたあどうでもいい。「賭けギャンブル」に勝てるか負けるかの話だ。




やってみるか、失敗したら失敗で仕方ねえよな。












◆◇◆◇◆

次回、俺はどうなってしまうのでしょうか。

投稿頻度はかなりゆっくりめですが、これからもおねがいします

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