第2話 研究所を追い出され
ロボットの中から心に響く音、生まれて初めての体験。これがいわゆる「PK」最近ではテレパシーやサイコキネシスと呼ばれている、超能力と呼ばれているモノだ。とある雨の日に、なにかのいたずらで、彼女には「PK」が使えるようになっていた。それは雨の日だった。
「PK」を使う人以外は知らない事実。ロボットに意思が存在することは一部の人間しか知らず、彼女も初めて知った。
「ハヤクシネバイイノ」
「コイツノセワメンドクサイ」
ロボットにある気づかれにくい言葉が、だんだんと彼女をむしばんでいった。ロボットにも感情があることを、この時代でもほとんどの人が知らなかった。
タイムスケジュールでは、食事の配膳、トイレ、入浴、etc。感情を持たずに過ごす最低限の行為が決められていた。今まで無だった彼女には、「PK」が発動してから言葉があふれていた。毎回入っているのは、だいたい同じ言葉。音が、言葉がどんどん脳を満たしていた。
彼女は分からなかった。時折口ずさんでみた。詰め将棋のプログラムが役に立った。耳は鍛えられていた。
今まで話す必要もなかったので、しゃべることはなかった。ある時、口に出してみた。
「ハヤクシネバイイノニ」
その声はロボットに、聞こえていないはずがなかった。
「ナンデコイツガ――」
彼女が初めて呟いた言葉は、何度も聞いて覚えた言葉だった。彼女にその気がなくても、今までに向けられていた憎悪、憎悪の言葉を返した。その瞬間ロボットたちは驚愕していた。何でこいつが言葉をしゃべるのだろう、と。
心の声とロボットの動きから、彼女は驚きを覚えた。ロボットとはいえ、感情を知った彼女は研究所から追い出された。話すのはモルモットとしての不具合だった。「自分」があるモルモットでは、実験データがとれないから。
元モルモットでは、人権がなかった。彼女は棄てられた。棄てられたモルモットだった。他の子どものような人権はなかった。彼女は誰からも必要とされていなかった。
彼女は荷物も持たされずに研究所から逃げだした。体力もなく、すぐ死ぬと思われていた。彼女は一人きりになった。身体はボロボロだった。彼女が来たのは海。
一月の海は凍えそうだった。
一人きりでボーっとしていた。液体に手を浸してなめると、不快だった。しょっぱいという単語は彼女に存在しない。そのまま倒れ込んでいた。一月の海岸に転がっていると、手足がどんどん冷えてきた。
「キミ、どうしたの?」
こんな小さい女の子が一人で何をしているのだろう?
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