転生するということ 間島泰三の一生

1981年 山梨県甲府市に生まれる。父やすしは警察官、母君子きみこは主婦。名前の由来は「親父の三倍立派になれ!」。


1986年 父泰、スキルス胃癌で死去。母は百貨店のサービスカウンター勤務を開始。主に祖父母が面倒を見る。この頃から母に「親より先に死なないこと」を言い含められるようになる。


1988年 小学校入学。入学式にて、周囲は父親がいること、自分にはいないこと、それに母が泣くことの意味を少しずつ理解し始める。


1990年 好きだった同級生の美代みよちゃんが引っ越してしまう。この頃、『友人が増えれば少しでも寂しくなくなる』という母と祖父母の考えで野球を始める。


1991年 バブル崩壊。百貨店も煽りを受け、生活が苦しくなりはじめる。野球をやめようと考えるが、母に止められ継続。このため真剣に練習するようになり、翌年チームの二番手ピッチャーに定着。


1994年 中学生に。新聞配達のバイトを申し出るが、母に「子どもの本分を大事にしなさい」と却下される。野球に取り組む一方、「いい会社に入って母に楽をさせる」を目標に勉学にも邁進。


1995年 努力の甲斐あってチームのエースに。勉学も上々で、母に「しっかりしてて助かる」と言われたことを誇りに思う。ただしこの年、初めての彼女に三ヶ月でフラれる。反動でますます野球と勉強に傾倒。


1996年 全国大会こそ縁はなかったが、県レベルではまずまずの結果を残す。相変わらず学業も良かったので、地元の野球強豪校と進学校、進学先を迷う時期もあったが、割とすぐ進学校に決める。


1997年 高校進学。もちろん公立。人生で二人目の彼女ができる。


1998年 野球部で二年生エースの座を勝ち取るが、夏の大会直前で肘を壊す。結果外野手へのコンバートを余儀なくされる。ショックで腐っているうちに彼女にフラれ、もう恋なんてしないと誓う。


1999年 懲りずに就職を模索するが、母と担任に説得されて大学受験を決める。また、高い学力から都会の難関大学を勧められるが、「母を一人にしたくない」との思いから地元の国公立に照準を定める。ちなみに野球は投手に復帰することなく、チームも県大会二回戦敗退。特にノストラダムスに怯えることはない日々を過ごす。


2000年 地元の国立大学生命環境学部へ進学。野球は引退、ビリヤード部へ。のちに結婚する奥野早苗おくのさなえと出会う。


2001年 あっさり宗旨変えし、早苗と交際を始める。部活の飲み会にて、酒に酔った友人を介抱する姿にグッときたため。なお一回目の告白では「付き合ってください!」「なんで?」とフラれ、二回目にて成功。


2002年 『経験を積むため』とインターンに行った東京の商社から、内々定をもらう。院に行くか就職するかで迷っていたところで、非常に悩ましくなる。理由は母のために、就職するなら地元と決めていたため。結局母に説得され、就職に決める。


2003年 就職も決まっているので、バイトしまくったり遊び尽くしたり……と思っていたが、卒業論文に苦戦してなんとも言えない感じになる。


2004年 就職。母と涙の別れ。東京にて早苗と同棲生活を始める。


2007年 「三年勤められたので、責任が持てる男になったと思う」と早苗にプロポーズ。「固い」と却下される。後日「僕と結婚してください」「素直でよろしい」と入籍。


2008年 娘が生まれる。早朝に生まれたので朝日あさひと命名。


2011年 娘が幼稚園に通い始める。お迎えに行くために仕事を高速で片付けるようになるが、もちろん半ドンは許可されない。


2013年 係長に昇進。自分が5歳の時に父が亡くなったことを思い出し、娘の6歳を見届けられるのか緊張走る。父親として家族を守る決意と自覚を新たにする。


2014年 娘の6歳を見届けられたことに感動。


2015年 娘が小学校入学。ランドセルを買ってあげられたことに漢泣き。


2018年 娘が学校でいじめられていることを知り、ふにゃふにゃしていた担任を危うく殴りかける。


2019年 課長に昇進。


2021年 娘が中学生に。ブレザー姿を見届けて咽び泣く。吹奏楽部に入ったのでフルートを買ってあげる。反抗期が始まり、心が砕け散る。が、『こういう時にどれだけ親が真っ直ぐ向き合ってくれたかが、娘ののちの人生の財産になる』と信じてコミュニケーションを図る。


2022年 娘に彼氏ができて、さらに心が砕ける。サントリーオールドのCMが胸に染みるようになる。


2023年 商用で飛行機に乗りカナダへ。予定より早く話がまとまったため、帰りの予定の飛行機まで一日分の余裕ができる。「お、一日早く帰れば、朝日の誕生日に間に合うじゃん!」と搭乗する飛行機を変更。


翌日、太平洋上で機が消息を断つ。

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