第二次元種接近遭遇 その1
「モノノちゃん。今ちょっといいかな?」
「あ、はい」
カウンターでメロンパンなる異世界の神フードを堪能していると、オーナーが急に話しかけてきました。今貴重な喫メロンパンタイムだろ、見て分かんねぇのか。
というのは口に出さず、いつもの絶世の美女モノノちゃんマジ天使ダイヤモンドスマイルを返します。
「いやねぇ?」
オーナーは首の後ろを揉みながら一歩左(私視点からは右)へズレました。するとそこには、
「新しいチート冒険者をスカウトしてきたんだ。登録よろしく」
「あれまぁ(また)ご新規さん! ようこそ、いらっしゃい、ま……?」
なるほど、大剣を背負った、いかにも冒険者な装いの方がいました。いたんですが……
なんか、マネキンみたいな、明らかに作り物の何か。
「オ、オーナー……。これ、失礼、この方は一体……?」
「あぁ、今回の冒険者はね」
オーナーはヘラヘラ首の後ろを揉んでいます。殺すぞ。
「ゲーム世界ってところからスカウトしてきたんだ」
「ゲーム世界?」
ゲームってあの、たまに異世界商人カツヒコさんが見せてくれるアレでしょうか? ゲーム&ウ◯ッチにこんなのいませんでしたけど。白黒でしたけど。
「いやぁ僕もね? 敏腕スカウトを名乗るからには、飽くなき新規開拓を続けなきゃってことでね」
「はぁ」
「だから見た目もなんか、ポリゴン体? っていうの? ちょっと変わってるけど気にしないで。よくいる
「へぇ」
『クロードです。よろしくお願いします(ポポポポ)』
「うわびっくりした‼︎」
思わず椅子から転げ落ちるところでした。
え? 確かにマネキンみたいなのが急に喋ったらびっくりするよな、って? 違う違う、そうじゃないんですよ。
この人、急に虚空へ板を出現させて、そこに文字を浮かび上がらせたんですよ。筆談です。
だからこの『クエスト
「な、な、何今の⁉︎」
「いやー、フルボイス化してるゲームじゃなかったんだよねぇ。ムービー内のちょっとしたセリフと戦闘時の『くらえっ!』とかは喋れるよ」
「あなたは何を言っているの⁉︎」
そもそもゲームの世界に行ったって、オーナー何者だよ! 話に付いていけないんですが⁉︎
『おりゃあ!』
『うぐぁっ……』
『アイダーッ‼︎』
「うわぁうるせぇ‼︎ 証明してくださらなくて結構です!」
「アイダはヒロインなんだって」
「どうでもいいよ! 声がデカい!」
「これはプレイヤーが音量調節高めでプレイしてたみたいだねぇ」
オーナーはあくまで暢気、意味不明ですが、それだとこちらも困るわけで。
「あの、オーナー。本人の前でド失礼なんですけど、本当にこの、人? 大丈夫なんですか?」
「大丈夫だってぇ。実力は保証するよ?」
「そういうことじゃなくて……!」
「クロードくん、見せてあげて」
『ステータスオープン!(ポポポポ)』
「ステータスぅ?」
クロードさんが板筆談したかと思うと、今度は別の大きな板が。そこには、
『HP:999 MP:999 攻撃力:999……』
なんかたくさんの項目と999の羅列が。
「オール999だよ? ね? すごいでしょ?」
「いや、相場が分かんない……」
「ほら、レベルだってカンストしてるし、スキルもたくさん持ってるんだよ?」
『各種魔法もコンプリートしました!(ポポポポ)』
「うわぁ情報量が多い‼︎ そういうのは一度履歴書にまとめてからお願いします!」
唯一の救いは、板が用済みになるとどこかへ消えること。いつまでも残られたり一々片付けろとか言われたら、たまったもんじゃありませんからね。
私が疲れ切ってカウンターに肘を突き
「というわけでモノノちゃん、クロードくんの登録お願いね」
「はぁ……」
『よろしくぅ!』
「あ、それはボイスあるんですね。『よろしくお願いします』はないのに」
釣られて顔を上げ、オーナーと目が合うと、彼はニヤリと厄介な笑みを浮かべました。
「それとさ、彼が早くギルドに馴染めるように、優先的に仕事回してあげてよ。大丈夫、雑に強いからどんなクエストも平気さ」
「雑って言った!」
「だって周回プレイしまくったみたいでさ、『ひのきのぼう』装備の通常攻撃でラスボスをワンパンできるんだよ?」
「雑に強かった!」
『照れます(ポポポポ)』
「そこ照れるんだ……」
「じゃ、僕は部屋に戻るから」
オーナーは去り際に少し煽るような声と表情(平常運転)を向けてきました。
「複雑なチート冒険者だと君がマネジメントミスばっかりするから、シンプルな強者を連れてきてあげたんだよ?」
「はぁ⁉︎」
いろいろ異議申し立てたいことはありますが、
『改めてよろしくお願いします! お名前教えていただいてもよろしいですか?(ポポポポ)』
「モ、モノノ・アワレーです……。よろしく……」
これがシンプルって、正気かオーナー?
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