トラウマチック瞬間的

本編

　みなさんは忘れられないものとかってありますか？例えば赤ん坊の出産、父母の臨終、夢が叶った時、様々な忘れられないものがあると思うんです。何か自分の言葉で説明できずに、ずっと心に残ってしまうもの。私にもあります。その時、私は高校の教師でした。30過ぎて独身で、家族もまだ元気なので、ある意味そういう覚悟のいるものにはまだ出会うことはないと思ってたんです。その日もいつもの様にパソコンの前に座って成績の確認をしていました。それで、ふと窓を見たんです。何となくです。そうしたら、目が合ったんです。何と目が合ったか？人です。窓の外から人が現れたんです。その顔は確実に私の目があっていました。その瞬間、私の時が止まったかのように感じました。そして、時が進むと同時に察したんです。「ここ二階だよな。」って。時が進むと、人はすっと下に落ちて言って、数秒もしないうちに「どさっ！」と強い打ち付けられた音がして、同時に悲鳴が聞こえました。正気に戻って急いで外に出てみると、そこには沢山の生徒がいました。既に他の教師が救助に向かっていたようで、群がる生徒をかき分けて群衆の中心に行くと、そこには血溜まりに浮いた生徒がいました。そうです。目が合った正体でした。目があらぬ方向を向いて、腕がぐちゃりと捻られている惨状を見て、思わず吐き気がしました。でも、仕事ですから、そのまま救急車が来るまでできることをしました。

　その生徒は死にました。即死でした。どうやら、その子は虐められていたようで、それで自殺を決意したみたいでした。たしかに私のクラスの生徒ではなかったのですが、流石に自分の高校でこういう事が起きたとなると心にくるものが強く、実はそれでもう教師を辞めてしまったんです。それで今は、民間の会社に何とか再就職できて、普通のサラリーマンとしてやっていってるのですが、夜、布団に入って、寝る前にいつもあの事を思い出すんです。実は落ちた事が忘れられない訳じゃないんです。

　目が合った時、その子、笑ってたんです。