第7話 『一緒に寝よ』

『彼氏なんていらないけど、えっちしよ? ……でも私、一生妹だから大切にして?』


 ……え、なに? どゆこと? 想像もした事が無い言葉に、思考が停止しそうだ。これは……なんて答えるべき?


 答えがわからないまま


「いや……ダメだろ、仮にも妹になったわけだし」


 そう答えたのだけど


「えーダメ? でも血は繋がってないじゃん? キンシンソーカンにはならないんじゃない?」


 そんなこと言うから


「いや、そーゆー問題じゃないだろ、たぶん」


ちょっと自信なくなってきた。




「ねーじゃあさ、一緒に寝よ? それもダメ?」


「いや、ダメだろ、俺も男だし、紗織も女の子なんだし」


 なんでこんなにグイグイ来るんだよ。


「でも、お兄ちゃんは“そーゆーことしない” ってお風呂入る前に言ってたじゃん? だったら問題ないじゃん?」


「いや、でも、俺も一応、男だし……」


 紗織ってこんな子だったっけ?



 なんて答えるのが正解なんだよ。誰か答えを教えてくれ。


 こんなに一緒に寝たいと言われたら、そりゃ俺だって一緒に寝たいよ、好きな子なんだから。けど、好きな子と一緒に寝て、襲わない自信なんて俺にはない。


 けど……付き合ってないのに襲うとか、それはそれで俺の倫理観に反する。あーもう考え過ぎて頭が真っ白になりそうだ。


 そんな時。


「じゃあー、ゲームしよ。一晩一緒に寝て、やっちゃったらお兄ちゃんの負け、しなかったらお兄ちゃんの勝ち!」

 

 なんてこといい出すんだ。


……ここまで言われたら、抵抗するのも疲れてきた。うん、もう、考えるのやめよう。


「……知らないからな? 俺は一応ダメって言ったからな?」


 そして一応念を押したのだけど


「うるさいなー。そんな事ばっかり言ってると、またキスして口塞いじゃうよー? ほーら、早く寝よ?」


 うん、だめだ、もう論破できる気がしない。


「はいはい。分かったよ。じゃあ、もう寝るぞ? おやすみ」


 諦めて俺は紗織と一緒に寝ることにした。一応紗織とは違う方を向いたものの、心臓がドキドキしてきて眠れそうにない。


 すると、


「ねー、先輩。……抱きついたら……怒る?」


 紗織は俺の背中に向かって寂しそうに聞いて来て。


 相変わらずなんて答えるのが正解かわからなくて黙っていた。すると、後ろからそっと抱きつかれた。


 え、まじ? ほんとに抱きつくの? このまま寝るつもり?


 俺の心臓がさらにドキドキとしてきて。

 けれどなんて言ったらいいのかも分からなくて。そのまま寝たふりをしていた。すると


「……寝ちゃった? 紗織、そんなに魅力ないのかなー」


ボソッと悲しそうに言い出したから、なんかそれだけは否定しておこうと思って


「そーゆー話じゃない」


そう言った。すると


「じゃあ、どーゆー話? 胸小さいのがいや? それなら……先輩好みのサイズになるまで触って? そしたら大きくなるかも」


 そんなことまで言われたら、もう、俺の中に抑えてた何かが込み上げてきて。


「あーもう、紗織うるさい。あんまりうるさいと、俺が口塞ぐぞ?」


 そう言って紗織の方に身体を向けた瞬間


「……!!」


 俺がするより先に、紗織に唇を奪われた。

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