第6話 『えっちする?』

 紗織に唐突にキスされて、戸惑わずにはいられない俺に、紗織は余裕そうな表情で、


「ねーねー、お兄ちゃん、本棚のマンガ、借りてもいいー?」


 そう聞いてくるから


「え? ああ、いいけど」


適当に答えてからハッとする


 ヤバ……それなりに青年向け漫画とかもあるんだけど……


 いや、別に普通……だよな? 


 少し心配になって紗織の方を見てみると、全然余裕そうな表情を浮かべてあんな格好で俺のベッドでゴロゴロしながら漫画読んでて。


 ……いや、もうあれは俺のベッドではなく、俺と紗織のベッドか??


 あれこれ考えていると、ますます感覚がおかしくなってくる。


 けど……好きでもない男のベッドとか、いやじゃないのだろうか……いやいや、そんなことより好きでもない男とキスとか……いやじゃないのだろうか、……いやいや、好きじゃない男とキスなんて……しないだろ。つまり紗織は俺のことが、好き??


 ……まんまと紗織がさっき言った言葉の通り、しばらく紗織の事ばかり考えていた。


「ねーねー、長谷川せーんぱい」


 すると紗織に呼ばれたので


「え、なに?」

 

 答えると


「ね、ね、こっち来て」


 手招きされたので紗織のそばまで寄ってみた。するとひそひそ話をするようなポーズをして来たので、紗織の手のそばに耳を傾けた。すると


「ねぇ、私と、えっちする?」


そんな事を言ってくるから


「え!!!!!!」


びっくりして大きな声が出た。すると紗織は悪びれることもなく


「もーそんなおっきな声出さないでくださいよー。ほら、このページに書いてあるから、マネしてみただけですよー?」


イタズラな顔してそんな事を言うから


「あー、もおおお、お前なあああああ!!」


 たまらずそう言うと


「やーん、ごめんなさーい。怒らないでよお。したくなったりとか……した? それとも、紗織とはそーゆーこと、したくない?」


 茶目っ気のある声で言ってから、今度は伺うように聞いてくるから


「お前なぁ、あんまり俺をからかうなよ。彼氏とかいるんじゃないの? 紗織はそんなに可愛いんだし」


言った俺の言葉に、


「……彼氏なんてめんどーじゃん。そんなのいらない」


少し寂しそうにボソッと言うから


「……だったら、俺をからかうなよ。俺と付き合いたいわけじゃないんだろ?」


そう言うと、


「彼氏なんていらないけど、えっちしよ? ……でも私、一生妹だから大切にして?」


さっきまでのイタズラな表情とは違って、少し寂しそうにそんな事を言った。

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