第2話 同居一日目。
俺の親……ふざけてるのかな。俺と父が暮らす家に紗織と彩奈さんも一緒に住むって……それ、どー考えても部屋数足りないんですけど??
だから俺と紗織が同じ部屋って……それってありなの??
——俺の家は、母が他界する前に三人暮らしを想定して買った2LDKの戸建て。だからまだローンが残っていて、簡単に引っ越せないのは分かる。
そして、紗織が彩奈さんと二人で暮らしいていたアパートが、最近の豪雨で土砂災害に遭ってしまい、早急に新しい部屋を探していたのも分かるし、とても気の毒だと思う。
そんな時に、もともと再婚を意識していた二人が一緒に住もうという話になったのも、その部分だけを聞けば分かる。
そして、父と彩奈さんが同じ部屋を使う、それは分かるよ夫婦になるんだから。
けどさ、俺と紗織が同じ部屋なのは……ダメじゃない?? もう子どもじゃないんだし。付き合ってるわけでもないのだし。
しかもさ? 俺が俺の部屋だと思って過ごしていた俺の部屋の中にこんな可愛い紗織が入るって、これ、俺のテリトリーの中で好きな女の子と過ごすって事で。
俺、俺俺言い過ぎ? そりゃ動揺してるんだから仕方がない。
なんせ紗織は、自分の部屋が被災しただけでも可哀想なのに、さらに男の部屋で一緒に暮らすように言われて、どんな気持ちなんだよ。気の毒じゃないか。そう思ったのに。
「ここがお兄ちゃんの部屋なんだあ。男の人の部屋って感じ。ゲームとかするんだねー。こーゆー漫画読むんだ」
……嫌がるどころか俺の部屋を興味津々で見ている。
やめて? 俺の方が恥ずかしい。なんの罰ゲームなの、これ。
「なあ、望月。お前嫌じゃないの? いきなり俺と同じ部屋、一緒に使ってとか言われて」
たまらず聞いてみた。すると、
「え? もう私、望月じゃないよ? 今日からは紗織って呼んで? おにーいちゃん」
可愛い顔して言ってきて。論点違うんだけど?
「あ……紗織は嫌じゃないの、俺と一緒の部屋とか」
とりあえず言い直してみたのだけど。
「へへー。長谷川先輩に紗織って呼ばれるの、嬉しいなあ」
なぜか喜び出して。この状況で長谷川先輩呼びに戻されると、バイトの後輩を下の名前呼びして喜ばれてるみたいで、感覚おかしくなるからやめて欲しい。
「……今聞いてるの、そこじゃないんだけどな?」
「え? 長谷川先輩は、嫌ですか? 紗織と同じ部屋で過ごすの」
質問に質問で返された。
……ここはなんて答えるべき?
「あ……いや、なんというか……さすがに男女同じ部屋でというわけにもいかないからさ、寝る時は俺、リビングに行くから……」
とりあえず気を使ってそう言うと、少し残念そうな顔をして
「……えー、でも先輩がリビングで寝て、もしも風邪ひいちゃったらやだな。紗織と一緒に寝るのは、嫌ですか? 一緒に寝たいな」
紗織は俺を真っ直ぐに見つめて、困り顔でそんな事を言ってきて。
え? まじ? ドユコト?
だんだん頭の中が、パニックになってきた。
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