第15話 取引
翌日、内閣〇〇〇の役員という人が家にやってきた。朝一番で何事かと思ったが、スライムダンジョンの件で1億持ってきたらしい。
俺は家に上がってもらうことにすると、玄関で対応した人とは別に数名の人が家に上がりこんできた。
「すみません。これは重大な契約だからということでSPの人間をつけられてしまいまして」
「構いませんよ。では書類を出してください。一応確認するので時間がかかりますが待っていてください」
尊敬語だとか謙譲語なんかは分からない俺は、一応丁寧になるように心がけながら応対した。
契約書には簡単に言うと、スライムダンジョン2つを1億円で譲ることが記されていた。
「誰も円でとは言ってないんだけどな~」
とひとりごちると役員の人は顔を真っ青に、それに対しSPの人は警戒心をむき出しにしていた。
俺がこういったのは円の価値はダンジョン誕生から暴落しているため、それほど価値のあるものでもないからだ。
まあ金はたくさんあるのでパパっとサインして皆様にはおかえりいただいた。ちなみにこの契約書にはダンジョンのそばに建てられたわが家も提供する資産に含まれていた。
ダンジョンすぐそばの家などいらないので構わずサインしたのだが。
1週間後、俺はオークダンジョン近くに建てた家で今後のことを考えていた。その時ドアベルが急に鳴り響く。
「はいはーい」
と玄関へ向かうと、ギルドマスターが申し訳なさそうな顔で総理〇〇が怒った顔で立っていた。
話を聞くに、ダンジョンを買い上げたことで探索者希望者だった人は去った。その代わりの人材を派遣したにもかかわらず成果が上がらないことを俺のせいにした総理〇〇は、損害賠償を求めてきたらしい。それでギルドマスターを伴って俺の所に殴りこんできたというわけだ。
俺はこの訪問もカメラで撮影している。今後の日本がどうなるのかを楽しみにしつつも対応する。
「私は言われた通りにダンジョンを譲渡しただけですよ。そこには私が手を加えるような契約はなされていません。何なら家を渡したり、円での取り引きとも言っていないにも関わらず円での取り引きに応じる等、譲歩したつもりなのですが・・・」
「そんなことは聞いていない。なぜ君がいた頃には参加していた探索者希望者が急に止めてしまったのか。なぜ急にスライムの討伐速度が下がったのか。今まで我が国で産出されていた魔石の数が急に落ち込んだのか。それらの説明を求めているのだ」
「それは全て答えが出ているじゃありませんか。スライムの出現頻度が下がっているからですよ」
俺は簡単なように言ったが、ダンジョンの魔物の湧きの頻度をあげることは難しい。ギルドマスターは知っているはずだが説明しなかったのだろうか?と思い、ギルドマスターを見つめると。
そっぽを向いていた。
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